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歩留まり率と直行率

 歩留まり率と言うのは、投入した部材に対して良品がいくつ取れたかを示す。100個分の部材を投入して良品が99個取れれば歩留まりは99%だ。
一方直行率は作ったものが一発で良品になる率を示す。すなわち100個投入して99個が検査を一発で合格すれば直行率は99%だ。

歩留まり率と直行率のどこが違うかというと、100個作ったときに直行率が99%でも、検査で不合格になった1個を修理して良品になれば歩留まり率は100%となる。

すなわち歩留まり率というのは不良がいくらあろうが、修理して良品になればOKという発想である。言ってみれば出荷台数確保を優先する考えかただ。

一方直行率の方は、不良は不良としてカウントされる。したがって直行率を良くしようということは不良を作らない決意となる。

歩留まり率だけを見ていると、工程の品質改善はできない。直行率を指標として品質改善を図るべきだ。

ある経営者がこんな話をしてくれた。工程内検査で必ず見つかるはずの不良品が顧客より返却されてくる。修理品の検査が十分ではなく不良品が出荷されると推定し、修理を禁止にしたらぴたりと不良返却がなくなったというのだ。
つまり余分に投入した部材やその加工賃を犠牲にして、品質の確保を優先されたわけだ。

この工場では、不良品はラインアウトしておき出荷台数が足りなくなると班長さんが修理し自分で検査して出荷品に追加していた。

電気検査などの機能検査は問題ないが、通常ライン内で行われる目視検査などが一切行われないことになる。班長さんと言えども出荷のプレッシャーの中で、目視検査で不良としなければならないものを見逃してしまうのだろう。

これも出荷台数確保の歩留まり率的発想といって良いだろう。

不良品はその場で工程に戻し全ての工程を再度通過させる事が必要だ。これをやらなければ、不良を作りこんだ作業員は知らずに不良を作り続ける可能性もある。

直行率を指標とし、不良が出るたびに原因解析と対策をする。これにより直行率を向上させなければならない。歩留まり率だけを指標としていると、こういう発想にならない。


このコラムは、2009年2月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第85号に掲載した記事です。

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不良を作らない決意・その後

 昨年181号のメールマガジンで、不良を作らない決意をした経営者をご紹介した。

「不良を作らない決意」

工程内で発生した不良の修理を止める。そしてその不良は見せしめのために作業現場の一等地に置く。当然修理をすれば歩留まりは上がる。中国では人件費が毎年上昇しているが、それでもまだ日本と比較すれば安い。経営者としては、材料費をムダにしたくないという思いがあるだろう。それでも修理を止め、歩留まりが悪くなっても直行率を上げることを選択された。

当時その決断を賞賛する記事を書いた。
そして先週その工場を再訪する機会があった。

工場を一見して、生産物量が上がっているのが分かる。
しかし例の不良品展示エリアが見当たらない。経営者に聞くと、工程内不良は激減し1/10以下になったそうだ。従って不良品を置いておく場所は不要になったわけだ。当然不良修理に必要な時間も、人員も不要となった。生産効率も上がっている。

当時の思い切った決断がほんの8ヶ月足らずで、これだけの成果になっている。

もちろん修理を止めるだけではこうはならない。
工程の品質改善、不良を作らないポカ除けなど色々な手を打たねばならない。

まずは溜まった不良品を3tトラックに載せ廃棄するのを、全従業員で見送った。従業員の中には、涙を流す者さえいたそうだ。

その後、内緒で作業場にボール盤を持ち込み打ち損なったりベットを外そうとする班長を叱り、修理をしない意味をとくとくと説得するなど、苦労を重ねた結果だ。

全ては人の心から始まる。
不良品を廃棄する痛みを理解した作業員は、不良を次工程に回さないよう努力する。
修理を前提とすると、ちょっとした汚れ(外観不良)は検査の時に拭き取れば良いと考え、そのまま次工程に流してしまう。

経営者の「不良は修理しない」という決断は、当初大きな材料損失を生んだだろう。
しかしその決断が、工程内不良1/10という革新を生み、生産効率も改善した。


このコラムは、2011年8月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第218号に掲載した記事に加筆修正したものです。

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