東莞のある工場を訪問した。この工場の若手経営者とは知り合って4年ほどになる。時々お目にかかる機会はあったが、工場を訪問するのは初めてだ。
見せていただいた生産現場の中に、不良品が置いてある。
通常不良品は、目立たない場所に一時置き場を作り、修理工程に投入される。しかしこの工場では、生産現場の一等地にドンと不良品の置き場を作っている。
経営者に理由を聞くと、「見せしめ」なのだという。
不良品を修理しない。不良品は廃棄するという決意をした。修理をすれば良いや、という甘えを排除するためだ。そして廃棄しなければならない不良品を、皆が見えるところに置いている訳だ。
人件費が高騰しているとはいえ、中国でのモノ造りコストは、まだ材料費が占める割合が高い。それでも不良は修理しないという決断を下した。つまり歩留まり率は考えない。直行率で勝負をしようというわけだ。
トヨタ方式生産方式の元祖・大野耐一氏が、不良の修理工場を廃止しようと取り組んだのと、同じ発想だ。トヨタでは不良をラインアウトして修理工場へ送ることをやめ、ラインを止めて修復することにした。現場はラインが止まらないように、改善を繰り返す。そのような改善の積み上げで、トヨタ式生産方式は生まれたのだ。
先週訪問した工場では、不良として集められていたのは完成品がほとんどであった。完成品になる前に、不良を除去する。その不良が発生しないように改善する。これを繰り返してゆけば、不良を作らない生産工程になってゆくだろう。
不良を修理しない決意は、不良を作らない決意だ。
このコラムは、2010年11月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第181号に掲載した記事に加筆修正したものです。
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