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日替わりヒーロー

 プロ野球は今週末日本シリーズが始まるらしい。中日ドラゴンズファンの私は、今シーズンも早々にペナントレースへの興味を失った。

今季は3季連続優勝の広島カープが散々の成績となり、読売ジャイアンツが5季ぶりのリーグ優勝となった。両チームの躍進と蹉跌の原因を考えてみたい。

監督の違いを考えると、
 原監督:10季中6季リーグ優勝
 緒方監督:5季中3季リーグ優勝
両軍互角だ。

やはり選手の戦力差のように思われる。
象徴的なのは、昨シーズンまで広島で主力選手として活躍した丸選手が巨人に移籍している。ということは、今期限りで丸選手を手放す巨人は来季のリーグ優勝は危ういかもしれない。アンチジャイアンツの個人的たわごととお許しいただきたい。

本日のメルマガで言いたかったことは、ヒーローが固定化している組織は脆弱性を内包している、という仮説だ。ここまで長い前置きを置かずとも、普通に考えてもこの仮説は真実のように思える。

会社という組織も同じだろう。
経営トップのカリスマ性、有能な幹部のずば抜けた能力だけでは、限界がある。
毎日ヒーローが入れ替わるような組織の方が強いはずだ。
こういう組織は、常に2番手3番手が競い合っており相互成長がある。同様に部門間でも相互成長があるはずだ。

もちろん日替わりヒーローが互いに競争相手を潰し合うような競争関係であれば、組織力が上がるはずはない。


このコラムは、2019年10月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第888号に掲載した記事です。

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利他の力

 東日本大地震,福島原発事故に関するニュースや,ツィッターのつぶやきを拾ってみた.

事故後、福島第1、第2原発に入った東芝の技術者は100人以上。日立製作所から来ている120人とともにケーブル敷設など重要な業務を担当している。前線を支える後方部隊は約600人。20キロメートル圏外に複数設置した仮設の待機所には常時、交代要員が詰めている。

ぜんぜん眠っていないであろう旦那に、「大丈夫?無理しないで。」とメールしたら、「自衛隊なめんなよ。今無理しないでいつ無理するんだ?言葉に気をつけろ。」と返事が。彼らはタフだ。肉体も、精神も。

父が明日、福島原発の応援に派遣されます。半年後定年を迎える父が自ら志願したと聞き、涙が出そうになりました。「今の対応次第で原発の未来が変わる。使命感を持って行く。」家では頼りなく感じる父ですが、私は今日ほど父を誇りに思ったことはありません。無事の帰宅を祈ります。

宮城県石巻市にある「イトーヨーカドー石巻あけぼの店」は11日の地震で建物が一部損壊した。電気、ガス、水道が止まり、店員は来店客200人を店外に誘導して営業を中止した。
その後午後6時、被災を免れた飲料水やカップ麺、乾電池など数十種類の商品が店頭ワゴンに並んだ。営業を止めたのはわずか3時間だった。

駅員さんに「昨日一日一生懸命電車を走らせてくれてありがとう」って言ってる小さい子供たちを見た。駅員さんは泣いていた。俺は号泣した。

お菓子の袋を持ってレジに並んでいた子供が、レジ横の募金箱にお金を入れて、お菓子を棚に戻して出て行った。店員さんの「ありがとうございます」という声が震えていた。

 これらのニュースやつぶやきに触れるたびに落涙していた.今もこのコラムを書きながら,流れる涙を止めることが出来ない.いつまでも感動しているだけではいけない.この出来事をしっかり考えて見たいと思う.

原発事故現場では,被曝を恐れず自らの命を賭けて戦っている人たちがいる.
被災地で救援活動をしている人たちも,疲労の限界を超えて働いている.
被災地では,自宅や家族の安否も確認できないまま,緊急必需品の販売をする人たちがいる.

こういう人々は,自らを省みず他人のために働くことが出来る人だ.
利己を排し利他を求める行動に,多くの人は感動と感謝と尊敬の念を持つ.
利他の力を持つ人間が多くいる組織は強い.

「滅私奉公」「国のため」「会社のため」という道徳観が,戦後の経済復興を支えた.焦土となった日本の都市を見て,今の繁栄を想像できた人がいただろうか?国民全員が「豊かになりたい」という渇望とも言える目標を,共通の道徳観の元に共有し,一歩一歩努力をしてきた結果だ.

「滅私奉公」「国のため」「会社のため」という道徳観は,今の日本では薄れている.国を代表するスポーツ選手も「日本のために」と発言する人は少なくなった.
「ゲームを楽しみたい」「(自分の)目標に向けてよい結果を出したい」という発言が普通になってきており,世間もそれを受け入れ始めている.

しかし有事ともなれば,利他の力を大いに発揮する.
阪神・淡路大震災での復興や,今回の災害での復興活動がそれを証明している.

では,中国で経営している工場はどうであろうか.
残念ながら,中国人労働者に「会社のため」という「滅私奉公」の精神を要求しても意味は無い.

しかし彼らに利他の力が無いわけではない.
2008年の四川大地震の時に,多くの中国人が利他の力を発揮した.
彼らに利他の力が無いわけではなく,その力を発揮する対象が家族・縁者に限定されているだけだ.

四川大地震の時には,「被災者を救おう」「被災地を復興しよう」という共通の目的・目標が出来たために,利他の力を発揮する対象が広がったのである.

この力を引き出せば,強い組織になる.
そのために「滅私奉公」を強要するのではない.「活私奉公」を説くのだ.
つまり利他の力を発揮すれば,すなわちそれが利己となる,という道理が,原理・原則となる仕組みと仕掛けを用意して置けばよいのだ.

他人に利益をもたらす行動が評価され,処遇が決まる.そういう評価制度を作る.
つまり多くの部下を育てた上司が評価され,昇給・昇格する.顧客や同僚から多くの感謝を集めた従業員が,多くの給与を手にする.

そして企業は,仕事を通して従業員の成長と幸福を追求する場所である,という共通の目的・目標を,理念として伝える.

企業そのものが,利益追求の利己主義から,顧客満足,従業員満足の利他主義に切り替わらねばならない.

そして顧客,従業員がその利他の力が自分に及ぶのを実感すれば,感動,感謝とともに,自らも利他の力を企業に対して発揮するだろう.


このコラムは、2011年3月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第198号に掲載した記事に加筆修正しました。

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共感力

 個人の成果は、能力×意欲と言う関数になると考えている。能力がなければ成果は出せない。能力が有っても意欲がなければ成果にはならない。
足し算ではなくかけ算だ。能力がゼロならば、いくら意欲が高くても成果は出せないだろう。意欲がゼロならば、能力が高くても行動しない。行動して初めて成果となる。従って、能力と意欲のかけ算で成果の大きさと考えるのが妥当だと考えている。

個人の集合体であるチームや組織の成果を考えると、個人の成果の総和が組織の成果となるはずだ。しかし目指す方向がずれていれば、組織に貢献する成果が少なくなる。組織が目指す方向と同じならば、個人の成果がそのまま組織の成果に足し込まれる。個人の方向が組織の方向と45°ずれていれば、個人の成果のルート2分の1しか組織に貢献しない。90°ずれていれば、組織への貢献はゼロになる。180°ずれていれば、組織の成果はー1になる。

能力も意欲も高い人が、組織が進むべき方向と反対を向いていれば、最悪の結果となる。

組織の成果を関数で表すならば、Σ能力×意欲×cosθとなるだろう。
 Σは総和の記号
 θは組織が目指す方向と個人が目指す方向の角度差

リーダの仕事は組織の成果を最大にすることだから、
・メンバーの能力を高める。
・メンバーの意欲を高める。
・メンバーと組織の方向性を合わせる。
の3点が重要な役割となる。

メンバーの能力を高めるのは比較的容易だろう。教えて練習させれば良い。(もちろん学ぶ意欲がなければいくら教えてもムダだが)
しかしメンバーの意欲を高める、方向性を合わせるのは,教えるだけでは達成できない。能力を高めるためにも意欲の向上は必要だ。

意欲を高め、方向性を合わせる方法が分かれば、成果は上がる。

実現したい目標を具体的に提示することだと考えている。
例えば、今期の売り上げを20億円にすると言う具体的目標が有れば、メンバーの意欲が上がり、方向性が合うだろうか?多分無理だろう。

20億円と言う数値がまず想像出来ない(笑)

売り上げ目標を達成したときの状態が、自分自身のこととしてリアルに想像出来なければ意欲を上げるのは難しいだろう。
例えば、目標を達成したら給料が上がり、毎晩ロマネコンティを夕食に1本空ける生活をしている、と想像したとしよう。そのために一度ロマネコンティを飲んでみる。良いアイディアだと思うが、物欲では上手く行かないだろう。
達成してしまった時に、意欲を継続するための新たな物欲を探さねばならない。
逆にいつまでも達成出来ない物欲を持てば、そのうち心が折れる。

仲間に対する貢献、顧客に対する貢献、社会に対する貢献など、具体的ではあるが終わりのない目標、むしろ生きて行くための目的が出来れば、継続的に意欲を持ち続けることが出来る。

そしてそれが組織の方向性に合っていれば、組織に対する貢献も大きくなる。
メンバーにそのような目的を持たせるのは、統率力とか指導力と呼ばれるモノでは不十分だろう。力を発揮するのは「共感力」だと思っている。
共感力とは、自分たちの仕事の目的に共感させる力のことだ。


このコラムは、2016年3月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第468号に掲載した記事に加筆しました。

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