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続・統計の活用

 1月14日配信のメールマガジン「統計の活用」で厚労省「毎月勤労統計」の不適切調査問題を取り上げた。最終的には大臣の俸給返納、担当官僚の懲罰で幕引きとなったようだ。

問題を再度整理すると以下のようになる。

  • 厚労省が発表している毎月勤労統計は、従業員500名以上の事業所からの回答を回収し平均給与などを調査、発表している。
  • 規則では全事業所のデータを収集することになっていた。
  • 東京都に関しては対象事業所の1/3をサンプリング抽出し全国平均を算出。
  • 18年から、東京都のサンプリング合計を3倍して全国平均を算出

この問題の本質は、財務省に正確無比な全数データがあるのだからそれを使うべきだと申し上げた。

この意見は事情を知らぬ者の寝言だったようだ。
税務署が持っているデータは、その他の用途には使えないよう法律で決められているそうだ。役所の縦割り行政の弊害という指摘は正しかったが、法律から変えねばならないというのは、役人にはどうにもできないことだ。

統計を担当する職員が足りなかったのではないか、という予測は正しかったようだ。2004年には6000人いた職員が2000人に減っているそうだ。主に農水省の職員が減ったらしいが、厚労省も300人から200人に減っているという。

4000人もリストラしたのだろうか?
公務員は安定した職業だと思っていたが、それは過去の話なのかもしれない。
しかし統計担当の職員を各省庁が個別に抱えるというのも無駄の多い話だ。統計処理が担当ならばどの省庁の仕事でも同じようにできるはずだ。ここにも縦割り行政の弊害がある。


このコラムは、2019年1月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第778号に掲載した記事です。

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統計の活用

「誰がなぜ、こっそり補正? 厚労省の統計、広がる不信感」

 「毎月勤労統計」の不適切調査問題で、厚生労働省が11日に公表した検証結果では、なぜ不適切な調査が始まり、どうして昨年1月調査分から本来の調査手法に近づける補正がされていたのか疑問点が多く残った。ほかの政府統計への影響もまだ見通せず、野党は追及姿勢を強めている。

 「真実を統計で客観的に伝えることが使命。意図的な操作はまったくない」

 厚労省の中井雅之参事官は11日の検証結果の会見で、昨年1月調査分から補正したのは賃金の伸び率が高く出やすいやり方に変更する意図的な操作だったのではと質問されると、こう強く否定した。

(以下略)

全文

(朝日新聞デジタルより)

 1月12日付の電子版記事だ。
内容をかいつまんで説明すると以下の様になる。

・厚労省が発表している毎月勤労統計は、従業員500名以上の事業所からの回答
 を回収し平均給与などを調査、発表している。
・規則では全事業所のデータを収集することになっていた。
・東京都に関しては対象事業所の1/3をサンプリング抽出し全国平均を算出。
・18年から、東京都のサンプリング合計を3倍して全国平均を算出。

東京都分は1/3の事業所しか調査していないため、全国平均に与える影響が
小さくなる。それを補正するために東京都のサンプリング合計を3倍にして
平均給与を計算する様に変更した訳だ。東京都は給与が高めの企業が多いため、
計算方法変更後に平均給与が上昇した様に見えている。

新聞の論調は、アベノミクスに忖度し計算方法を変更したのではないか、との
論調だ(苦笑)

しかし問題はそこではないと思う。
なぜ東京だけサンプリング調査なのか?更に言えば、基礎データとして事業所
からの回答をそのまま使っているところだ。

ここを指摘すれば、東京都の事業所数が多くて職員を増やさねば対応できない、
などの理由が返ってくるのだろうか(苦笑)

しかし本当の問題は、縦割りの官僚組織にある。
平均給与を計算したいのであれば、税務署のデータを使えば勤労者一人一人の
正確なデータが手に入るはずだ。

厚労省から財務省に一言お願いすればよかったはずだ。
野党に転落しさらに分裂してしまった前政権の「事業仕分け」は何だったのか
と言いたいところだ。

誰だって正確な統計データはすでに有るとわかっていたはずだ。
それをわざわざ人手をかけて不正確な統計情報を公開していた訳だ。


このコラムは、2019年1月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第771号に掲載した記事です。

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データは現場・現物で見る

 不良の低減とか生産性の改善をする場合,データは重要な鍵になる.しかしデータから見えてくることだけでは改善はできない.

例えば工程間の作業バランスを改善するために,各工程の作業時間を測定し机上で検討してもあまり良いアイディアは出ない.
つまり計測した作業時間データは,今の作業方法によるデータでありそれをいくらひねっていても大きな改善にはならない.

作業時間と仕上がり数量から平均作業時間を求めても何も分からない.このデータからは,作業者ごとの作業時間のばらつき,作業者間の作業時間のばらつきは見えてこない.

作業現場を良く観察することにより改善するポイントが分かる.着眼点はばらつきだ

理論的な作業時間分析どおりに作業ができていることはあまり無い.作業時間のばらつきから無駄な動作が見えてくる.作業者間のばらつきから,習熟度に依存してしまう作業や,細かな作業方法の違いによる効率の差が見えてくる.
これらは現場でしか分からない改善ポイントだ.

不良統計データも現場・現物で見直す.同じ不良現象の中に,別の原因が含まれている事がある.
例えば異物や傷による外観不良は統計データだけでは,改善ポイントは見えない.現場・現物を見ることにより初めてどこで,どうして異物や傷が発生しているかがわかる.

データを取る事が無駄というわけでは無い.悪さ加減を知る,改善効果を測定するためにもデータは必要だ.改善に役に立たないデータの収集や加工はやめる.その時間があれば現場に出かけるほうが効果が高い.


このコラムは、2009年7月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第107号に掲載した記事です。

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