以前ご紹介したプラスチック製インペラの燃料ポンプのリコールが拡大している。
通常はプラスチック材料をグリースなどの油脂が付着する環境では使用しない。
ガソリンもプラスチック材料を侵し、膨潤、破断などの不具合を発生させる。今回の回収は耐油脂製プラスチック材料の強化・ポリフェニレンスルフィド(PPS)を使用している。ガラス繊維やタルク(ケイ酸マグネシウム)を含有しガソリンが付着しても問題はないはずだ。だが、成形時の温度が低いと、樹脂密度が低くなりガソリンにより膨潤する。
市場不良発生により、初めてこの現象に気がついたというのではお粗末だ。
当然新規材料なので分からなかったということはありうるだろう。
燃料ポンプに使用することを決定した時点で、使用環境で変形などの変化が発生しないことを確認すべきだ。なぜなら燃料ポンプのインペラに関して過去から、燃料ポンプの寸法制度、ゴミの巻き込みなどで回収騒ぎを起こしている。このことに着目すれば、「プラスチック・インペラの寸法精度」というキーワードが出てくるはずだ。もちろん加工精度には問題はない無かろう。しかし使用中の変動も考えるのが設計者の役割だ。
新規・珍奇技術を採用する時は十分な検討が必要だ。
新規技術を採用すれば、同業者の一歩前に出られる。この誘惑に勝つのは困難だろう。
珍奇技術を採用してしまうと業界標準とはならず、供給性や価格で不利になる。
しかしナーバスになるだけでは、競争力のある製品は作れない。
事前に想定できる事態を列挙し、事前に対策することで問題を回避したい。
このコラムは、2021年8月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1172号に掲載した記事です。
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