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西尾硝子鏡工業所・西尾智之社長

 先週は、大田区で硝子や鏡を加工しておられる西尾硝子鏡工業所を訪問した。
西尾社長の人づくりの取り組みをセミナーでお聞きし、大変興味を持ち工場にまでお邪魔した。

西尾硝子鏡工業所は従業員25名ほどの中小企業だ。
先代の後を受け、若くして後継者となった西尾社長は「価格競争」から「価値競争」にパラダイムシフトするためには、従業員全員が「西尾ブランド」となる事が重要と気付かれ、人づくりに取り組んでこられた。

西尾社長は毎年経営計画発表時に、全社員に感謝状を書いている。表彰状ではない。感謝状なので、何に感謝しているのか具体的に書く必要がある。このようにして社員一人ひとりに心を配っている事が伝わる。しかも全社員一人ごとに期待する姿を、1年ずつ5年後まで考え、リストにしてある。このリストに従って人財育成計画を立てている訳だ。

西尾硝子鏡の工場は住宅街の中にポツッとある。当然工場の騒音は近隣の住民からの苦情になるだろう。以前は周辺住民とのトラブルもあったという。先に工場を開いたのはこちらであり、住民は後から来たはずだ、と他人事ながら私が憤慨した(笑)

しかし今はそのようなクレームはほとんど来ないという。周辺住民との関係が変わったのは、朝一番の掃除が始まりだったそうだ。工場の中ばかりではなく周辺の通りも、全従業員で清掃活動をしている。この際に周辺住民と挨拶を交わす事が増え、クレームを言ってくる人が激減したそうだ。

2011年の3.11の時は、地震により部材の供給に遅延が発生する可能性がある、という「お詫び」のFAXが仕入先から大量に来た。「お詫び」と言っているが、一方的な通告だ。地震によりガラスが壊れてしまい困っている顧客に対して、そのまま伝えることはできない。そこで徹底的にシミュレーションし、○月○日には正常復帰できます、という告知をしたそうだ。困っていた顧客からは注文が殺到したそうだ。災い転じて福となす、とは正にこのようなことを言うのだろう。ただ災いを嘆いていても何も起こらない。顧客の困り事をどう解決するかと言う視点で考えた事で「震災特需」を得る事が来た。

この出来事には伏線がある。震災が発生する数ヶ月前に、BCP(事業継続計画)に取り組んでおられたそうだ。実は「そんなの何の役に立つのですか」と言う社員の反対に遭い、社長一人で取り組んでいたそうだ(苦笑)

初めて作るBCPだ。的確な計画ができていた訳ではない。しかし一度取り組んでいたので、実際に問題が発生したときにすぐに実践できたのだろう。「納期が遅れる事があります」と言うのは自己都合の連絡だ。「○月○日までに正常復帰します」と言う連絡を受ければ、顧客は計画を立てる事ができる。さらにもっと早くできないかと応援してくれる顧客も出て来たのではないだろうか。

準備ができていれば、災難をもチャンスに変える事ができる。


このコラムは、2017年2月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第515号に掲載した記事に加筆したものです。

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