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逆転発想

 「逆転発想」とは我ながらへたくそなネーミングだと思う(笑)この「逆転」は一発逆転の逆転ではない。右回りに対する左回り、という意味で正転、逆転という言葉を当ててみた。

例えば、改善活動で誰かが改善案を提案したとする。この時に「○○だからそれは上手く行かない」という考え方を逆転発想すると、「○○という制約を解決すれば上手く行く」となる。

ポジティブシンキングとは少し違う。制約条件により上手く行かないと発想するのではなく、制約条件をアイディアを実現させるための解決課題と考える。
発想の方向を逆にするという意味だ。

設備の可動率を上げるために金型交換時間を短縮する、という改善を考えて見よう。次に使う金型を台車に乗せて事前に準備する、という「外段取り化」を考えたとしよう。段取り替えのエンジニア達は、200kgもある金型を台車に乗せて運ぶのは無理だ,と反対する。しかし金型用の昇降台付きの台車を用意すれば可能となる。

逆転発想が上手く出来ないのは、意外にも経験のある優秀な者だったりする。
長い間「正転」で考える習慣がついているので、発想の転換が難しいのだろう。

市場で発生した発煙事故の原因を検討する時に、電源の過電流保護が働かないと発煙事故につながる、という仮説を立てたとしよう。どのような場合にその様な現象となるか?と設計部門のリーダに質問すると、暫く回路図を睨んで「設計は間違いない。そんなことは起きない。」と正転で考えるので、会話が噛み合ない。どの部品が故障すれば、保護回路が働かなくなるか?という発想で考えて仮説が正しいかどうか検証するのではなく、設計に誤りがない事を先ず考えてしまうのだろう。

QCC活動で改善をしている時も、その改善案には投資が必要だからダメだ、と可能性に自ら蓋をしてしまう事がある。
逆転発想では、先ずはどのくらいの投資が必要なのか見積もり、投資が見合う効果が出るか検討する。更にもっと安く同じ効果が得られる方法がないか検討する,という手順になる。

逆転発想で上手く行く体験をすると、次から逆転発想をする様になる。
この様な体験を「目からウロコが落ちる」というのだろう(笑)


このコラムは、2016年12月5日配信のメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第505号に掲載した記事です。
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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

現場改善

 中国企業で生産改善の指導をしている。行き当たりばったりの改善ではなく、計画的な改善、メンバーの達成感と問題発見能力、解決能力を育成するため、QCCの手法を使って指導をしている。

製造現場の主任さん達から、自工程の問題、改善課題を挙げてもらった。
全部で17項目の課題が集まった。初めてQCC活動に取り組む人たちなので要領が得られない様で、すぐに改善出来る項目が大半を占めていた(苦笑)
それらを「すぐにやる」項目として、取りかかってもらった。これだけでも、相当な改善効果となる(笑)

現状把握、原因分析をしなければ対策につながらない、QCC活動として取り組む価値があるテーマを選び、チームで改善を始めた。

部品の組み付け作業が時間がかかる、という問題だ。
この問題の改善のために、製造,設計、生産技術、品証のメンバーでチームを作り活動する事にした。

先ずは現状把握だ。
どのくらい時間がかかっており、どの作業が困難なのか説明を聞いてもよく理解出来ない(苦笑)作業が大変だと分かっているが、その現状を定性的、定量的に説明する習慣がなかったのだろう。他の機種の倍時間がかかる、だけではさすがに理解出来ない。早速現場で現状把握をする事にした。
目的を持って現場を観察すれば、問題点を整理し、現状の「悪さ加減」を定量的に把握出来る。先ずはここからスタートだ。

今まで経験がない、という事はハンデに違いないが、逆に考えればその分成長の伸びしろが大きいという事だ。
同様の状況で指導した同業の工場では、初めての活動で作業効率を4倍にした事がある。


このコラムは、2016年11月21日配信のメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第503号に掲載した記事に若干加筆したものです。
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QCサークル成果発表交流会

中国でQCサークル活動がうまくゆくのだろうか?と疑問を持っておられる方もあると思います。
しかし広東省では、毎年定例でQCサークル成果発表会が開催されています。
改革開放後に中国に進出した第一陣の日本電機業界の先輩諸氏がQCサークル活動を指導されたおかげです。
当時指導を受けた中国の若者たちが中心となり、QCサークル活動を継続しています。多分中国国内では、広東省がQCサークル活動の歴史が一番長いと思います。広東省質量協会主催のQCサークル成果発表会は、大手民営企業、国営企業などが多数参加しています。2016年第36回成果発表会には、253サークルが発表する大きな大会になっています。
私も以前参加したことがあります。多くのサークルが2日間で発表する熱気のある大会でした。しかし発表だけで質疑応答や講評はありません。もっとサークル同士の交流をするように、主催者側の友人にアドバイスしましたが3年間変化なく、以降成果発表会には参加していません(苦笑)

この様な経緯で、自社でQCサークル成果発表交流会を主催することにしました。

社外のQCサークルとの交流により、自社のQCサークル活動を活性化したい。
他社のQCサークル活動を参考にし、社内でQCサークル活動を始めたい。
QCサークル活動運営ノウハウなどを、他社の経営者と話し合いたい。

このような方は是非ご参加ください。

indexQCサークル成果発表交流会

日程:2016年12月16日(金)
   15:00~17:00 成果発表交流
   17:30~20:00 懇親会
場所:東莞市南城区ホテル会議室
会費:300元(発表者と弊社お客様は無料)

成果発表は中国語、日本語どちらでも構いません。
成果発表の通訳さんをお連れください。
(通訳さんの参加が困難な場合はご相談ください)

[contact-form-7 id=”1758″ title=”QCC成果発表交流会”]

QCC活動の効能

 品質月間にQCC活動の効能について考えてみたい。
戦後焼け野原となった日本が「世界の工場」としての地位を築いた背景に品質管理活動があった。その活動を全社従業員にまで展開する役割を担ったのが、QCC活動と言っても良かろう。

既にQCC活動の効能は証明済みだが、その後日本経済はバブルに向かいデフレに陥る。バブル崩壊期にQCC活動が下火になり始めた、という印象を持っている。
バブル崩壊後、日本の製造業が徐々に力をなくして来た。特に電器業界の凋落が目につく。家電業界は軒並み中国企業に買われてしまった。

家電業界の衰退とQCC活動の衰退を結びつけるのはムリがあるかも知れない。
しかしバブル崩壊後多くの製造現場で現場力を失いつつあるのは事実だろう。
日本製造業の現場力の源泉だった人財が、派遣・アルバイトなどの人材に置き換わり、改善力が失われた。QCC活動の様な改善力を鍛える場が無くなれば、現場力を維持する事も困難だろう。

QCC活動の効能は、実際に得られる改善効果だけではなく、人財育成効果があると考えている。特に中国の様に、教育水準にばらつきがある従業員の底上げに大きな効果がある。

監督職の指示通りに作業をするのが仕事と思っている人たちには、改善への動機も意欲も生まれないだろう。しかしQCC活動を通して、自ら作業方法の改善を体験する。この体験を喜びと感じれば成長は早い。

中国の生産現場におけるQCC活動の最大の効能は、人財育成効果だと考えている。
それは知識のみならず、自ら成長意欲を高める効果がある。


このコラムは、2016年11月7日配信のメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第501号に掲載した記事です。
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QCC3.0

日本の製造業が、力を付け「モノ造りニッポン」と言う称号を得た影には、品質に対する継続的改善が有ったと言って良かろう。
当時先を走っていた欧米先進国に一歩でも追いつこうと、執拗なまでに改善活動をして来た。その原動力がQCC活動であり、QC七つ道具などの手法だ。
これをQCC1.0と名付けてみたい。

QCC1.0とは、以下の手順に従った問題解決型活動だ。
現状の問題を把握し、原因を分析し、改善対策を実施する。すなわち現状の「悪さ加減」を見つけ、改善する活動だ。日本の製造業がもっとも得意とする改善活動であり、これはもはや日本企業のDNAと言っても良かろう。これを継続し続けたことにより、他に追随出来ない品質レベルを達成した。QCC1.0が日本の戦後復興を助けたのは間違いない。
しかしそれがビジネスとして成功しているかと言うと、はなはだ疑問だ。
コモディティ化してしまった家電製品などは、中国企業に追い上げられている。
一方日本にはアップルの様な魅力的製品を創造する企業は稀だ。

QCC1.0が有るのならば、QCC2.0も有る。そうでなければわざわざ1.0と名付けた意味がない(笑)

元々QCC活動は、製造現場を中心にして取り組まれて来た。しかしTQCと言う概念が出て来る。全社で取り組むQC活動と言う意味だ。間接部門を含む全社で取り組む活動となってきた。これをQCC2.0と呼びたい。

間接部門も製造部門と同じ様に、現状の悪さ加減を把握し、原因を分析して改善すると言う活動をしたが、製造部門の様には上手く行かない。製造部門の問題は、解決すれば大きな成果が得られるが、間接部門の問題はさほど大きな成果が期待出来ない。それよりも今の業務レベルをもっと上げる、新しい業務に取り組む、と言う活動の方が大きな成果が期待出来る。しかしこの様な活動
は、QCC1.0の現状把握・原因分析の問題解決型アプローチでは、上手く行かない。

そこで考え出されたのが、「課題達成型活動」だ。
例えば、フレキシブルな納期対応をする為に、従来ロットごとにまとめ生産をしていたのを、平準生産に変えたい、という課題が有ったとする。
これを問題解決型アプローチで取り組むと、ムリがある。現状(まとめ生産)の悪さ加減を把握しても、平準生産に移行する対策は出て来ない。
「課題達成型」は平準化生産と言う「理想状態」を実現するための課題を定義して、実現していくと言うアプローチになる。

この事例の活動を、無理やり問題解決型で活動することも可能だ。
「顧客の納期要求に応えられない」と言う問題を解決する活動として、現状把握をしてみたら「まとめ生産」がフレキシブル生産を阻害し、顧客納期要求を満足出来ない原因と判明した。この原因に対する対策を検討する。と言うストーリィになる。
しかし「無理やり感」が漂う。顧客の納期要求に応えられる様に「平準生産を行う」という課題を設定し、どうすれば良いかを検討した方が素直で良い。

つまりQCC1.0とQCC2.0の違いをまとめると以下の様になる。
QCC1.0は「何を改善するか」と言うWhat型の活動。
QCC2.0は「どうやって課題を達成するか」と言うHow型の活動。
別の言い方をすると、
QCC1.0は過去と現在の悪さ加減を改善する活動。
QCC2.0は現在もしくは未来に設定した課題を達成する活動。
となる。
QCC2.0の活動は、「改善」ではなく「改革」を目指すことができる。
しかし先に述べたように、この活動をしていれば「アップル」の様になれるかというと、否定的な答えしか返って来ないだろう。

アップルは、今までユーザが体験したことが無い製品を創造することにより、ユーザに「魅力的品質」を提供する企業と言って良いだろう。
「問題解決」「課題達成」では不十分だ。それに加えて「価値創造」が必要だ。

価値創造型のQCC活動をQCC3.0と名付けたい。
問題解決型活動も課題達成型活動もその活動目標は、自己都合だ。
価値創造型活動の目標は顧客都合だ。顧客が考える理想状態をまず知ることが必要となる。
顧客が考える理想状態(What)をどのように実現するか(How)、QCC3.0はWhat+How型の活動となる。

顧客の期待する理想状態を実現させれば「顧客満足」が得られる。

顧客が期待していなかった欲求を満たせば「顧客感動」が得られる。
アップルが目指しているのは「顧客満足」ではない。彼らはユーザに、どんな製品が欲しいですか?などと言うアンケートはしない。
まだユーザが期待すらしていない「感動価値」を創造しようとしているのだ。

アップルは、天才のアイディアと強力なリーダシップで、感動価値を創造する企業だ。
我々凡人はQCCの様なチームワークを使ったフレームワークで対抗するしかないだろう。


このコラムは、メールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】2015年7月13日号に掲載した記事に加筆しました。
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