温泉施設、過去2人死亡 硫化水素か、入浴客重体


 北海道足寄(あしょろ)町の旅館「オンネトー温泉 景福」で2014年10月、男性入浴客が浴槽内で倒れて重体に陥る事故があり、道警が業務上過失傷害の疑いで捜査している。事故直後の保健所の測定では、温泉に含まれる硫化水素ガス濃度が国基準を大幅に超えていた。この施設では以前にも2人が同じ浴槽で倒れ死亡しており、道警はこの2件についても経緯を慎重に調べている。

(朝日新聞電子版より)

 この男性は、未だに意識不明で入院中だそうだ。
この事件以前にも2013~2014年に3人が入浴中に倒れ、救急搬送されている。内2名は死亡している。この時の死因は「溺死」、「虚血性心疾患」として片付けられている。同じ温泉旅館で3人が入浴中に死亡している。少なくとも3人目が硫化水素ガス中毒と判明した時点で過去2名の死因が正しかったのか再検証すべきではなかったのか?

「事態を重く見た環境省は今年9月に再発防止に向けた検討会を設置し、硫化水素を含む温泉の安全対策について基準を見直す方向で検討している」と記事にあるが、事故発生後2年経ってもまだ検討段階なのかと行政の行動速度に不信感を覚える。

この事故の原因は何だったのだろか?
直接の原因は硫化水素ガスが浴室内に高濃度で存在した事だ。
温泉であるから硫化水素がすが出る事はやむを得ないのかも知れない。しかし人が入浴するのならば、健康に害がない程度に排気や換気が必要だろう。
この温泉施設にはそのような設備はなかった。
そればかりではなく、硫化水素学の濃度を測定した事すらなかったそうだ。

別の記事によると、温泉旅館の主人は1987年開業以来一度も硫化水素ガス濃度検査を受けていないと言っている。監督官庁である保健所も、事件後初めて硫化水素ガス濃度を測定し、基準を超えている事を把握した。
保健所の監視要領には2年に1度立ち入り監視をする事が定められているが、監視項目に硫化水素ガス濃度の測定は含まれていない。
環境省の基準では都道府県知事が必要と認めた時には、温泉施設にガス濃度の測定を命じる事が出来るとなっている。しかしどのような時に測定を命じるのか基準は示されていないとある。そのため北海道ではガス濃度測定を命じた事はないそうだ。

法律に規定ないからやむを得なかった、などというのは言い訳に過ぎない。福島県、群馬県などは定期的にガス濃度測定を行っている。

少なくとも2人目の死者が発生した時点で、硫化水素ガスによる死亡の可能性を検証すべきだったはずだ。その上で、行政監視に欠陥がないか調べれば、3人目の犠牲者は出なかったはずだ。

工場の安全災害も同様だ。
マニュアルに書いてないから何もやらない、という考えを改めねばならない。
マニュアルは作成された時点で、想定した事態に対応出来る様に書いてある。当然その時点で想定出来なかった事に対する手順は書いてない。
それらを補って行くのは、マニュアルを運用している者の責任だ。日々発生するヒヤリハットから重大事故の潜在要因を見つけ、マニュアルを改訂せねばならない。


このコラムは、2016年10月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第499号に掲載した記事です。このメールマガジンでは、市場不良などの事例から再発防止対策のヒントをお伝えしています。

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