山陽新幹線で3日、博多発東京行き「のぞみ56号」(N700系)のギアケースが壊れた問題で、上越新幹線でも2001年に同じようなトラブルが起きていたことが分かった。ともにギアケース内の歯車のベアリングが壊れ、部品がケースを内部から破損させていた。JR西日本の担当者は上越新幹線のトラブルを把握していなかったといい、教訓が生かされなかった。
JR西によると、のぞみのギアケース破損は、ケース内の小歯車の両側にあるベアリングが壊れ、部品が大歯車とケースの1センチのすき間に挟まったためとみられる。ベアリングが壊れた原因は不明だが、モーターの動力を小歯車に伝える軸が何らかの原因でずれたことなどが考えられるとしている。
JR東によると、上越新幹線のギアケースが壊れたのは01年4月22日。新潟発東京行き「Maxあさひ」(E1系)が高崎駅(群馬県)―熊谷駅(埼玉県)間を走行中、台車の異常を示す警告ランプが点灯した。列車はそのまま東京駅に到着し、折り返して新潟まで運行した。
車両基地で点検したところ、ギアケースが割れて潤滑油が漏れていた。
その後の調査で小歯車のベアリングが壊れ、その部品がケースを破損していたことが分かった。JR東は、ベアリングを押さえつけていた部品が不良品で、「遊び」ができていたと断定。改善策を講じたという。JR東によると、上越新幹線のトラブルの原因は鉄道総合技術研究所(東京)で究明し、国土交通省に報告した。
(asahi.comより)
「のぞみ」の車内に白煙が立ち込めたと言うニュースの続報だ。
このニュースを読むと、以前発生した上越新幹線での事故では、発煙する前に警告ランプが点灯し、故障が認知されている。しかしのぞみの事故の場合は、警告ランプが点灯せずに発煙が発生したようだ。ギアケースの破損と同時に、警告ランプが点灯しなかった原因も究明・改善しなければならないだろう。
乗り物に限らず、発煙・発火は利用者に多大な恐怖心を持たせる。あってはならない事故だ。予防保全、未然防止に最大限の努力を払わねばならない。
昔から、10年に一回同じような不良が再発されると言われている。
それは不良・事故を経験した現場の記憶が薄れて行き、また同じ事故を引き起こしてしまうためであろう。
不良・事故の経験を現場の記憶として継承してゆくには限界がある。
記憶として残すのではなく、記録に残し更に、組織の暗黙智として仕組み・仕掛けに落とし込まなければならない。
上越新幹線の事故の後に、車両保守点検手順、車両の製造手順、設計基準等が改定されただろうか?基準書、手順書の形で組織の暗黙智を形式智にしておくのが、過去の経験を忘れない方法の一つだ。
以前、積層セラミックチップコンデンサに亀裂が入る不良事故を経験した事がある。当時想定していたよりも、はるかに簡単にチップコンデンサには亀裂が発生することが分かった。そのため設計基準を変え、製造での加工方法も変更した。
しかし2年後、別の事業部で同じ不良が発生した。
当時私は大いに反省をし、毎月定例開催されていた全社QA会議の他に、全事業部の品質エンジニアが情報を共有しあうための月例会議を発足させた。そこで議論された内容は、技術資料・議事録として残り、全社に公開する。
これも組織の暗黙智を継承してゆくための仕組みと仕掛けになるだろう。
このコラムは、2010年3月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第144号に掲載した記事です。
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