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目標は宣言しない

 以前メールマガジンのコラム「リーダーシップの形」でデレク・シヴァーズをご紹介した。

「リーダーシップの形」

本日のタイトルは、デレク・シヴァーズのTEDスピーチ「Keep your goals to yourself」からきている。

Keep your goals to yourself

夢を実現したければ、夢を公言すると実現する可能性が高まる、というのが世の成功哲学と思っていたが、シヴァーズ氏によると逆だそうだ。

目標を人に宣言することで、「代償行為」が発生しすでに夢が実現したと錯覚してしまうそうだ。そのため夢実現のための努力に対するモチベーションが上がらず、結局夢の実現から遠ざかる、ということだ。

社会心理学者はこれを実験で確かめている。
163人の被験者に、個人目標を紙に書いてもらう。被験者を2グループに分け第一グループは、自分の目標を皆に宣言する。第二グループは目標を誰にもいわない。その後目標実現のために45分間作業をしてもらった。
第一グループは平均33分で作業をやめてしまった。
第二グループは全員45分間作業をした。

それぞれに目標達成の手応えを尋ねると、
第一グループはゴールにずいぶん近づいたという。
第二グループは目標の実現はまだ遠いという。

ここまでの実験で、どちらが目標に近づいているのかは明らかだと思う。

日本には昔「不言実行」という言葉があった。しかし最近では「有言実行」という新造語の方が幅を利かせているようだ。

あなたがどちらの考えに付くかは、ご自由だと思う。
最後に論語の一節をご紹介する。

「子曰く:君子言に訥(とつ)にして、行に敏(びん)ならんと欲す」

参照:「言に訥、行に敏


このコラムは、2018年9月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第716号に掲載した記事です。

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漆雕开

使shǐdiāokāi(1)shìduìyuēzhīwèinéngxìnyuè

《论语》公冶长第五-6

(1)漆雕开:孔子の弟子。姓は漆雕、名は开。あざなは子開。

素読文:
漆彫開しつちょうかいをしてつかえしむ。こたえていわく、われこれいましんずることあたわず、よろこぶ。

解釈:
孔子が漆彫開に仕官を勧めた。漆彫開答えて曰く「私はまだ任を全うする自信がありません」
孔子はそれを聞いて喜んだ。

早く仕官して禄を得たい、と考えるのは人情でしょう。しかし漆彫開は禄を得ることより、職責を果たすことを重視した。その姿勢を孔子は喜んだのでしょう。

論語で漆彫開が出てくるのはこの章だけです。
孔子を喜ばせる答えをしていますが、顔淵、子路、子貢などの常連組と比べる
と影が薄いようです。

変化と変革

 「変化」と「変革」は似ているようだが明確な差がある。
辞書を調べてみると、
「変化」:ある状態や性質などが他の状態や性質に変わること。
「変革」:変えて新しいものにすること。変わって新しいものになること。
とある。

変化は、ポジティブな変化もあり、ネガティブな変化もある。改善も劣化も変化だ。しかし変革はポジティブに変わることだ。

変化も変革も「変わる」ことは同じだが、変化は受動的、変革は能動的と定義できそうだ。

そして変化は受動的であるため、変化に対応するリーダが必要となる。
一方変革は能動的であるため、変革を起こすリーダが必要になる。

【変化リーダの資質】短期・中期のリーダシップ
 迅速な判断力・決断力
 メンバーの統率力
 変化(事故、火災、景気後退)は迅速に対応しなければならない。軍隊式のリーダシップで一気に解決しなければならない。

【変革リーダの資質】中期・長期のリーダシップ
 理念・ビジョンの策定と浸透
 メンバーの育成力
 変革(組織変革、新規市場進出)には一気呵成よりは周到な進捗が必要だ。
理念・ビジョンがぶれないようにし、メンバーの意欲と能力を高めて戦略的に取り組む。

向き不向きはあるだろうが、局面に合わせて変化リーダ、変革リーダを担える人財を育成できれば鬼に金棒だ。


このコラムは、2020年11月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1053号に掲載した記事です。

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人の心にビジョンを描く

 自分自身の心にビジョンがフルカラーで、かつ日付入りで描かれている人は、そのビジョンが実現する可能性が高いと言われている。「フルカラー」というのは私の比喩だが、ビジョンが明快・詳細になっているという意味だ。

私の個人的な見解では、ビジョンを他人の心に描く事が出来る人はビジョンの実現可能性は、更に上がる。

考えて見れば、当たり前だろう。自分のビジョンを投資家の心に描く事が出来れば、資金調達の心配は無くなる。自分のビジョンを従業員の心に描く事が出来れば、従業員はビジョン実現のために一生懸命働いてくれる。

実は私の心にビジョンを描いた中国人経営者がいる。
自動車部品の工場を経営している中国人だ。彼はやたら「PK」という言葉を使う。「PK」とはペナルティキックの略称で、一騎打ちという意味だろう。「ビル・ゲイツとPK」などとしばしば発言するので、ただの大ボラ吹きだと思っていた(笑)彼のビジョンは、自分の会社をフォーブス500企業にする事だ。

私が指導していた当時、彼の工場は従業員100名弱の町工場だった。彼はビジョンを実現するために、先ずは従業員の給与を倍増させた。保安係、清掃係も例外なく上げた。

このあたりから、この男はただのホラ吹きではないと思い始めた(笑)

彼が同業の経営者の心にビジョンを描けば、合併により企業規模が一気に2倍になる事もあり得る。成功者は必ずしも一人で成功する訳ではない。同じ志の者が協力する事で成功への道は近くなるはずだ。

彼は私の心にはビジョンを描いたが、従業員の心には描ききれなかった様だ。
私にはドミノが一つずつ倒れていく予感がある。しかし従業員にはホラ話にしか聞こえなかった様だ。

経営者には、従業員の心を動かす表現力も必要なのだろう。


このコラムは、2017年5月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第526号に掲載した記事です。

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