TOTOのトイレ製品、欧州で狙う「華麗な地位」


 日本の輸出品といえば車と家電だけかと思ったら大間違い。生活用品をはじめ、実に多くの日本製品が海外で使われている。欧州のトイレ市場に参入を図るTOTOの試みを見てみよう――。本連載「日本ブランドが世界を巡る」では、日本で売れている製品の工業デザインやパッケージが、海外進出の際にどう変化しているかに迫る。ものづくり企業のマーケティング担当者や製品開発者をはじめ、多くのビジネスパーソンに役立つはずだ。

(日本経済新聞より)

 TOTOの欧州市場戦略を紹介する記事が出ていた。TOTOの便器は、中国でもちょっと別格の扱いで、ショールームに展示してある。
中国の一流ホテルでは、アメリカンスタンダードの便器をよく見かけるが、TOTOの便器はもう一段上の水準という印象を受ける。

TOTOの便器が汚れ難いのはなぜか?
それは便器の表面がナノメートルの精度で平らだからだ。安物の湯のみなどはすぐに茶渋がついてしまうが、高級磁器の湯のみは茶渋がつかない。これと同じ原理なのだ。
汚れや茶渋は、表面の荒さに引っかかる。全く平らならば水を流すだけで汚れは流れ落ちてしまう。

「汚れがつかない」という要求品質を、便器表面の平滑度という品質要素を徹底的に磨き上げて実現している。便器はかなりの大きさであり、しかも量産でその平滑度を実現しなければならない。相当難易度の高い、製造技術の開発が必要になるだろう。

こういう品質を追求した製品開発、モノ造りが日本の強みだと考えている。
そこまでコストをかけなくても、と考えればそこいらにあるモノと同様にコスト競争にさらされる。

またもう一つの日本のモノ造りの強さは、ウォシュレットに代表される様な徹底的にユーザの使い勝手を追求するところだろう。
中島聡が言うところの「おもてなし」、サイトウ・アキヒロがいう「ゲームニクス」と共通したモノだ。

参考図書
「おもてなしの経済学」中島聡著
 
「ゲームニクスとは何か」サイトウ・アキヒロ著

1980年代の後半に、コンピュータ周辺装置のマーケティング会社が開催したセミナーに参加したことがある。欧米、日本のプリンターメーカの開発者がパネルディスカッションをした。
PCの普及により、紙の消費が減ると言われていたのに、むしろ紙が増えている。という話を、日本人パネラーが「日本ではトイレの紙の消費削減にも成功しているのに……」と発言した。
その瞬間に、欧米のパネラーが一斉に日本人パネラーに視線を送ったのを、鮮明に覚えている。

当時日本では当たり前だったウォシュレットは、世界ではまだその存在すら知られていなかったのだ。

余談だが、パネルディスカッションの同時通訳が、「パルプの消費」という日本語を「consumption of Pope」と聞こえてビックリした。「紙の消費」ならぬ「神の消費」だ(笑)


このコラムは、2013年1月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第291号に掲載した記事です。

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