ある中国人経営者の戦略


 久しぶりに、中国企業に勤めている友人に会った。彼の会社の中国人経営者は、以前日系企業に勤めており、日本語は堪能、日本びいきの人だ。

日本の品質要求は非常に高い。中国企業は言うに及ばず、欧米企業と比較しても日本企業の品質要求は高い。

中国企業の中には、日本のうるさい要求を嫌がり日系企業の仕事を受けない、と割り切る経営者が増えていると言う。

友人曰く、品質にかかる費用が大きく日系企業向けの製品は利益率が低いそうだ。中国の一流企業でも、日系企業と比べたら楽なモノだそうだ。当然利益率も中国企業向けの方が良い。そんな事情があり、ジワジワと日系顧客向けの生産比率が減っているそうだ。

しかし、この会社の中国人経営者は、日系顧客向けの生産を一定比率キープする様にしていると言う。その理由は、楽な仕事に慣れれてしまうと、日系顧客向けの製品は二度と作れなくなるからだと言う。

当然中国の消費者も、企業もこの先品質に対する考え方のレベルが上がって来るに違いない。

これは生産の品質ばかりではない。
例えば、出荷係のリーダと現場で話をしていると、話の最中にこうでしょ?と図解で説明してくれるのだが、図を描いているのは出荷製品が入っている段ボール箱だ。そんな所に描いちゃ駄目だ!と叱っても、何で?と言う顔をする。

梱包材料置き場にある組み立て前の段ボール箱が平積みになっている所に、昼休みに寝る従業員がいる様で、段ボールは人型に凹んでいる。

我々には当たり前の事が、彼らには当たり前ではない。彼らの当たり前は、我々には許容出来ない。しかしこのギャップは遠からず埋まってしまうはずだ。その時に日本的品質をちゃんと理解し、守れる工場が有利になる。

このメルマガでも何度も言っているが、品質とコストは別の話だ。
品質を上げるためにはコストがかかる、と言うのは言い訳に過ぎない。
コストと品質をトレードオフ関係にしてしまうから、解が得られないだけだ。


このコラムは、2015年4月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第421号に掲載した記事です。

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