先週は、UHT株式会社・松本芙未晃社長の講演を聞いた。
UHT株式会社は、顧客からいただいた図面により金型を作る下請け企業だった。
今は自社製品を持つメーカだ。しかも製品は40年間世界トップシェアという。
松本社長の著書:「価値の金型屋、世界へ 脱・下請けのストーリー」
自分で自分の仕事の値段を決められる会社にしたい、という創業者の思いがスタートだったそうだ。最初に商品化を目指したのが、家庭用かき氷器。昭和30年代、戦後の貧困から脱し、高度成長の前夜といっても良い時代、家庭に電気冷蔵庫が普及し始めた頃。何度か試作を繰り返し、納得のゆく試作品が出来上がった。
試作品を持って問屋を回るが全て門前払い。
下請けならば、作ったモノは必ず売れる。しかしメーカとして生産した商品が売れることは何の保証もない。夏場商品は春先にはすでに注文が確定しているという「常識」も知らなかった。
しかしたまたま居合わせたバイヤーが、試しに百貨店の即売で試してみようと声をかけてくれる。そこで500台の注文をもらう。500台は即完売。翌年の受注が確定した。翌年は爆発的に売れるが、他社から実用新案抵触で訴えられる。
そんな失敗から学び、自分たちの仕事で使うモノ、仕事を改善するモノに焦点を絞ることになる。圧縮空気を使った掃除機、手持ちグラインダー工具などを商品化しヒットさせる。
松本社長の講演から学ぶことは多い。
いきなり知らない市場をターゲットにしない。
まずは自分たちに近い市場を土俵とし、自分たちが困っていることを解決する商品を作る。
常にアイディアを出し続ける環境を社内に作る。
思いついたことをすぐに形にできる環境を準備する。
一番重要なことは、「メーカになる」という強い思いを全社員と共有することだ。
先週ご紹介したシステム・インスツルメンツの濱田社長は社外との協業で製品開発をしておられるが、松本社長は自社で開発している。しかし販売など他社の力を借りていることは変わりはない。社員を巻き込むのと同様に、他社を巻き込む力も重要だ。
メーカになることのメリットは多い。中でもユーザとのコミュニケーションが得られることのメリットが大きい。故障修理など間接的コミュニケーションで製品改善点や、新たな用途を知ることができる。
このコラムは、2017年2月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第514号に掲載した記事に加筆したものです。
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