東莞で工場を経営している友人とゆっくり話をした。私と一対一ではなく、彼が若い経営者に経験を語っているのを横から聞かせて貰って居た。彼は定年を過ぎ、今年新任の総経理が着任し、日本に帰任することになった。彼が中国に赴任してから10年間で、当初7社しかなかった顧客が330社にまで拡大した。売り上げは直近4年間で2.5倍にしている。彼の10年間の工場経営の経験を話してくれた。
会社を立ち上げてすぐの頃は、目標を達成する事を一生懸命やって来た。
毎年年度目標を達成し、工場は順調に業績を上げていた。しかし5年目位に、スランプがやって来た。目標は達成しているのに、心が空しいのだと言う。
その時彼が気がついたのは、目標ばかり追いかけているから空しくなる。会社を経営する目的が必要だと考えたそうだ。以来彼は自分の工場を学校、自分自身は校長と考えている。
彼が考えた目的は、経営を通して人を育てる事だ。
出稼ぎの作業員の多くは3年で辞めて行く。それでもかまわない、彼らは義務教育を終えて「卒業」して行く。高校、大学と進学するために別の会社に行くもよし、故郷に帰るもよしと言う訳だ。勿論更に学ぶために自社に残るもよしだ。
経営の神様・松下幸之助は、創業間もない頃、従業員に「松下電器は何を作っているか」と聞かれたら、こう答える様に教えていた。
「松下電器は人を作っています。あわせて電器製品も作っています」
「心に響く名経営者の言葉」より
毎年の売り上げ、利益は目標。人を育てると言う事が、目的だ。目的を持つ事で、ぶれない経営が出来る。数字だけ追いかけると迷いが出る。
このところ企業の不祥事が良くニュースになる。企業の軸となる目的、経営理念がぶれてしまうから利益を追求し、期限切れの食材を使ったり、食材を偽ったりすることになる。自らの経営目的に誇りを持ち、従業員と共有していれば、そのような不祥事は発生しないはずだ。
このコラムは、2014年3月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第352号に掲載した記事に加筆したものです。
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