セイコーウオッチ中国の董事長・吉村等氏の対談記事を読んだ。グループウェアのサイボウズが開催した上海のセミナーでサイボウズ代表・青野慶久氏との対談だ。
「大事なのは、明日の売上よりも“信用”」中国で100年間生き続けるセイコーブランドの秘密」
セイコーは100年前から中国に進出しているという。清朝が終わり中華民国が樹立してすぐの頃だ。改革開放時に安い労働力を求めて、中国に進出したのとはわけが違う。市場としての中国に進出したのだろう。
以前愛用していた時計のステンレスバンドの接続ピンがなくなり、近所の時計店に駆け込んだことがある。中国人店主は「おお成功」だ、と感嘆の声をあげ、良い時計だと褒めてくれた。セイコーは「成功」ではなく「精工」ではなかろうかと思ったが、私の中国語では通じないだろうと思い黙っていた(笑)
私の感想では、セイコーは中国でブランドを築いていたと思っていた。
しかし満足のゆく業績ではなかったのだろう。外部から吉村等氏がトップとして招聘された。
記事を要約すると、吉村氏の改革は次のようになる。
組織のコミュニケーション量を上げる。
毎朝上司から挨拶をする、程度の改革ではない。部門の数を減らし部門間のコミュニケーションを少なくした。蛸壺型組織が多い中国では部門の壁が部門間のコミュニケーションの障害となる。逆説的な方法に見えるが、現実的な対策かもしれない。
強いプロダクトを持ち、フォーカスする。
技術的に真似できない強さ。これは多くの日系企業が持っていると思う。そして市場で売れる強さ。吉村氏はデザイン、機能、価格帯でオンリーワンのポジションを見つけ、そこにフォーカスしている。
利害関係者を巻き込む。
中国ではECマーケットが急速に成長している。ECマーケットで成功するのはプラットホームを提供している企業を喜ばせること。そのようなコンテンツをどんどん上げてゆけば、プラットホーム企業は集客のためにより目立つようにしてくれるという。いわゆる「Win-Win」の関係を作る。具体的には時計職人を紹介する動画コンテンツをあげると、アクセスが増える。アクセスが増えるとプラットホーム企業は喜び、よりアクセスが集まるところにコンテンツを置いてもらえる。
過去の成功事例は成功事例ではない。
一般的に言えば過去の失敗事例を防ぎ、過去の成功事例を再生することが、成長への道のように思える。確かに失敗事例は、方程式化することにより再発を防止することができる。しかし過去の成功事例は、足かせとなることの方が多い。それは成功事例が成り立つ要因が時間とともに変化してしまうためだと考えている。つまり昨日の成功事例を方程式化できても、今日は適用できなくなってしまうということだ。
スピード
前項の事例で説明したのと同様に、昨日の戦略は明日も使えるかどうか不明だ。むしろ昨日の戦略は明日には使えないと考え、今日中に行動する、その方がうまくゆく確率が上がるだろう。
吉村氏は11月11日(光棍節。本来独身者の日であったが、なぜかネット特売の日になっている)ならば今(8月)の戦略が通用するだろうが、春節には別のことを考えなくてはならない、と言っている。
吉村氏は11月11日(光棍節。本来独身者の日であったが、なぜかネット特売の日になっている)ならば今(8月)の戦略が通用するだろうが、春節には別のことを考えなくてはならない、と言っている。
いかがだろうか?
100年とは言わずとも、あなたの会社が10年20年後も中国で戦えるように、信頼される企業になるヒントとなっただろうか?
このコラムは、2017年9月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第557号に掲載した記事を加筆修正したものです。
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