不便こそ良薬


 伊集院静「大人の流儀5 追いかけるな」を書籍朗読サービスで聞いた。
伊集院静氏に関しては、早逝の女優の夫ということしか知らず、今まで著作を読んだことはない。しかし朗読をしているのが大杉漣と知り聞いてみた。

「便利なものには毒がある。手間のかかるものには良薬が隠れている」
書籍中に出てきたメールと手紙を比較した言葉だ。
メールは便利だ。CCをつけることにより、同時に関係者と情報を共有する事が出来る。相手の都合に合わせて読んでもらうことができる。電話をかける時に相手の都合を考えるのが煩わしい。電話をかけるのが苦手だ。自筆で手紙を出す手間を考えると、憂鬱になる。

ところで私たちの改善活動は、不便を便利に変える事に他ならない。
不便な作業を自働化する。作業のばらつきを治具化する。これらの改善活動は不便を見つけることがスタートだ。作業員を観察する。作業員から不便を聞き出す。そのために現場に頻繁に行く。
改善のネタは不便の中にある。

不便という良薬には副作用がある。この副作用は医薬品の副作用とは違う。
作業員は、上司が自分の仕事に関心を持ってくれている、自分のために改善をしてくれている、と感じるはずだ。これは大きな副作用だ。

■■ 編集後記 ■■

最後まで読んでいただきありがとうございます。

大杉漣さんは私と同年代です。大杉さんが出演したTV番組はいくつも見た事があり渋い脇役と認識していました。今彼の略歴を振り返ってみると、寺山修司、唐十郎の演劇が役者としての出発点だったようです。私も学生時代に友人に誘われ、訳がわからないまま、それらの演劇を見た事があります。
「吸いさしのタバコで北を指す時の北暗ければ望郷ならず」寺山修司の短歌を暗唱して「文化人」になったつもりでいました。

大杉漣さんの早すぎる死を悼み、ご冥福をお祈りします。


このコラムは、2018年3月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第639号に掲載した記事です。

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