現代史を振り返っても「日本経済は1990年代初頭に燃え尽きた」という説ほど疑いようのない「事実」として定着しているものは少ない。この説は他国の政治家を大いに惑わしてきた。これから述べるとおり、米国はその最たる例だ。
日本の「失われた20年」というのは、単なる作り話どころではない。英語メディアがこれまで広めてきた中でも、とびきり不合理で、あからさまなでっちあげの一つである。私の話が信じられないのであれば、『インターナショナル・エコノミー』誌最新号に掲載されたウィリアム・R・クライン氏の記事を読んでいただきたい。
今年に入ってポール・クルーグマン米プリンストン大教授も同じような主張をしているが、一見低迷しているような日本経済は、それは経済的根拠とは無縁の、人口の変化に基づく幻影であるとクライン氏は指摘している。(日経新聞電子板より)全文
詳細はぜひ全文をご覧いただきたいが、要約すると次の様になるだろう。
- 日本の一人当たりの労働生産性は伸びている
「失われた20年」と言われる20年間で、米国の労働人口は23%増加しているのに対し、日本の労働人口はわずか0.6%しか増加していない。つまり一人当たりの生産量で見れば、日本の生産量は増えている。 - 日本の平成デフレは「良性デフレ」
この20年間日本を苦しめたと思われている平成デフレは、米国の大恐慌デフレとは全く異質なモノである。この20年間、物価が下落している時の方が日本経済は上昇していた。 - 円が上昇しても貿易面では成功
失われた20年の間に、日本円は対米ドルで49%上昇している。それでも日本の企業は利益を出して来た。トヨタ、日産はこの20年間で3倍以上の売り上げを上げているが、米国ビック3は惨憺たる結果だ。 - 「弱い日本経済」は意図的に操作された虚像
日本政府、日本企業のトップは「破滅的状況」「崩壊寸前」など日本経済の危機感を煽ったが、その実体経済は成長を続けていた。IMFの統計データでは、日本の人口1人当りの電力生産は米国の2倍のペースで伸び続けた。 - 中国の経済モデル
中国の貿易実態は、日本からの輸入が米国からの輸入より40%多い。日本の労働人口が米国の1/3しかない事を考えあわせれば、その差は大きい。日本からの輸入品は、先端材料、部品、生産設備などハイテク製品が大部分を占める。中国工場は、日本からの輸入品を元に生産をし、世界に消費材を供給している。
一方米国からの輸入品は基本的なコモディティーであり、特に多いのは、金属スクラップや古紙だ。
記事はこれらの論証により「失われた20年」と言うのはまやかしだと結論付けている。
私は、ここまで楽観的には見ていなかったが、「景気が悪い」と言うのは、メディアの操作によって作り出された「感情」だと考えていた。一部の困難を報道することにより、尾ひれが広がり、業界全体の困窮と捉えられると言う事が繰り返されたのだと思う。
2009年に、日本の謀TV局が「金融危機に喘ぐ世界の工場」と言う絵を撮りたいと、北京支局の方が取材に来られた。当時私のお客様の工場は、生産が落ちている所もあったが、このチャンスに生産改善をして体力をつけようと考えておられる所ばかりだった。マスコミの報道によって、多くの経営者が自信を失い守りに入る、その結果不況がホンモノになる。と言う私の観点を、記者の方にお話した。結局この番組企画はボツになったそうだ。
中国の労務費が毎年上がり続けている。
製造業に従事する若者が減っている。
東莞の労働人口が○百万人減った。
などネガティブな情報が、蔓延している。
しかし、だから業績が上がらないと結論付けるのは、経営者として余りにもレベルが低いと言わざるを得ない。
これらの条件は、同業者全員に同じ制約条件だ。この制約条件の中で結果を出すのが、ホンモノの経営者だ。
じゃぁどうすれば良いんだ。と言う声が聞こえて来そうだが(笑)
どの業種にも、通用する万能薬はない。あるとすれば「諦めない」と言う事だけだろう。
頭が真っ白になるまで考え抜く。それが経営者の仕事だ。日々の実務などやっている場合ではない。
私の頭髪がどんどん白くなっているのは、志の高い経営者様と一緒に考えているからだ(笑)
このコラムは、2013年9月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第325号に掲載した記事です。
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