羽根の無い扇風機を2009年に売り出して世界の消費者の心をつかんだ英ダイソン。今年はパナソニック、シャープなどが同様の商品を売り出し、ダイソンも日本仕様の新機種で迎え撃つ。「元祖」の開発に携わったダイソン・シニアデザインエンジニアのマーティン・ピーク氏(37)が朝日新聞のインタビューで開発秘話を語った。
――羽根無し扇風機「エアマルチプライアー」のアイデアはどうやって生まれたのですか。
「きっかけは、日本では発売していない我々のハンドドライヤーでした。手のひらの水を風でそぎ取るように乾かすのですが、開発中、細い隙間から強い風を送り出すと周囲の空気を巻き込んで大きな空気の流れができることがわかったのです。私を含む約150人のチームで3年をかけ、数百種類の試作機を作って製品化にこぎ着けました」――元々掃除機だけの会社じゃなかったんですね。
「20年前に創業者のジェームズ・ダイソンが生み出したサイクロン掃除機を主力に、エアフロー(空気の流れ)を扱う会社です。今は掃除機、ハンドドライヤー、扇風機の3分野ですが、約10年前には空気の流れの研究を水流に生かした洗濯機を発売したこともあります。二重のドラムが逆回転し、汚れがよく落ちたのですが、期待ほどは売れませんでした」――なぜ?
「サイズが少し大きかったのが原因だと考えています。失敗を生かし、現在我々の製品は能力は高いまま、少しでも小さくすることを重視しています」――掃除機も扇風機も、洗練されたデザインです。
「ウソだと思われるかもしれませんが、実はダイソンにはデザインを専門に手がける『デザイナー』は一人もいません。エンジニアが機能を突き詰めた結果が製品の形になっています。全てのデザインが機能を持っているのです」――研究はどのような体制で行っているのですか。
「本社はダイソン氏の故郷である、ロンドンから2時間の田舎にあります。約850人のエンジニアがおり、週1度ダイソン氏がやってくると皆が我先にと相談や議論を持ちかけます」――20年で生み出した製品が4ジャンル。効率的でないようにも見えます。
「確かに、もっと多くの製品を売ればもっと大きな会社になっていたかもしれません。ジャンルが少ないのは、『他社より優れていない製品は売り出さない』というダイソン氏のこだわりが原因です。彼は完璧主義者ですからね」(asahi.comより)
「ダイソン」の名前は,サイクロン掃除機や羽根のない扇風機で知っていた.羽根のない扇風機を初めて,家電量販店の店頭で見た時は,どうして風が出るのか不思議で,いつまでも売り場を離れることができなかった(笑)
中国でも,ダイソンの丸パクリの扇風機をよく見かける.
パナソニックも,羽根のない扇風機を出しているが,相当形状が違っている.マネシタ電器と揶揄された事もあるが,さすがに中国企業の様な事はしないだろう.
そのパナソニックによると,扇風機は3.11以来需要がほぼ倍増しているそうだ.
ところでこのダイソンと言うメーカは,自社技術にこだわり,磨きをかけるタイプの企業の様だ.
売れるならすぐ真似をする.
売れるなら技術を買って来てでも造る.
MBAでマーケティングなどを勉強した人は,こう言う戦略を肯定的に捉えるかも知れないが,私の様に技術者上がりの人間には,どうも「品格」がない戦略と見えてしまう.
ダイソンに意匠デザイナーはいない.
機能を追求すれば,自ずと意匠デザインが出来上がる.
何と無骨かつ素朴なデザイン論だろうか(笑)
今時こんなことを言っているメーカはないだろう.自分たちの技術に自信があるからなのだろうか.
『他社より優れていない製品は売り出さない』
我々も自社製品に対して,「価格」以外で他社より優れている,と言える様にこだわりを持ちたいモノだ.
このコラムは、2013年4月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第303号に掲載した記事に加筆したものです。
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