慢性不良


 繰り返し発生する不良を「慢性不良」と呼んでいる.
設備のチョコ停,製品の外観不良,原因不明のIC不良,などなど.色々対策を打て見ても,再び発生する.形を変えて発生する.こういう厄介な不良だ.

人に例えれば,慢性病と言う事だろう.
病膏肓に入る.
「疾,為む可からざるなり.膏(こう)の上,肓(こう)の下に在り.之を攻むるも可ならず.之に達せんとするも及ばず.薬も至らず.為む可からざるなり」
「膏」と言うのは,心臓の下辺り.
「肓」は,横隔膜の上辺り.
体の奥深くで,針も届かず,薬も効かない場所と言われている.ここに病因があると,治療の方法がないという意味だ.

慢性不良も同様だ.
膏肓にある原因に対策をせずに,病状(現象)に対処療法を施しているから,本当に治癒しない.病因が残っているので,再び病状が出て来る.

例えば,設備の加工原点がしばしばずれてしまう.原因を調べると,位置出しのネジが緩んで,原点がずれる.対策を「ネジの増し締め」とする.

ネジが緩むのが原因だから,増し締めをする.

論理的に見えるが,「ネジが緩む」は原因ではなく「現象」だ.従って「ネジの増し締め」は対処療法にしかなっていない.つまり「熱がある」と言う病状に対し解熱剤を与える,と言う対処療法になっている.

「ネジが緩む」原因を見つけなくてはならない.
この原因が膏肓に隠れている限り,不具合は改善されず,再発する.

ネジが緩むのは,ネジの締結力より強い力が,軸回転方向に加わるからだ.この力を特定し,その力が発生する原因を見つけて,対策すれば良いのだ.

論理的な思考力と,現場・現物を観察する眼力があれば,膏肓に入った病を治癒する名医となれる.


このコラムは、2013年3月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第302号に掲載した記事に加筆したものです。

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