ある工場経営者の引退


 私には中国工場経営者として尊敬している方がある.
このメルマガにもどきどき登場するSOLID社の原田則夫氏である.その原田氏が今年いっぱいで引退し日本に帰られることになった.

2005年1月に初めて工場を訪問して以来,何度か工場を再訪している.そのたびに新しい気付きがあり,自分なりに「原田式経営哲学」を勉強してきた.自ら考えることを自分に課すために,極力工場訪問は控えていた.

しかし,私の気付きの宝庫「ワンダーランド原田SOLID」が後僅かでなくなってしまうと分かると,居ても立ってもいられなくなり最近は毎週のように工場に訪問している.

初めて原田氏と出会ったとき,私には大きな悩みがあった.
前職時代に自社の生産工場をインドネシアに立ち上げた.このとき仲間と一緒に立ち上げをサポートし大変すばらしい工場を作ることができた.自分にとって自慢の工場だった.
しかし時が経ち,一人,二人と当初育てたリーダが辞めて行くごとに工場の力が落ちていった.
当時の悩みは「我々にはリーダーは育てられたが,工場は育てられなかった」ということだった.

そんな折,原田氏の講演を日本で聞き,すぐに中国の工場を訪問した.
そこには私の悩みの答えがすべてあった.

先週も工場を訪問してきた.
いまだに訪問のたびに手帳にメモが増える.
「原田式経営哲学」を受け継ぐ者として,少しでも多くを頭の奥に焼き付けたいと思っている.

このメールマガジン配信後の12月12日に原田師の訃報を聞くことになるとは、想像すら出来なかった。
師匠の帰国後身近に教えを請うことができなくなると言う焦りがあったと思う。しかし現実はもう教えを請うことはできない。


このコラムは、2009年12月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第129号に掲載した記事に加筆したものです。

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