企業の存在意義


 先週は内陸部の中国企業に呼ばれ、今年の事業計画発表会に出席した。何社ものグループ企業の董事長、総経理が出席していた。
私たちを呼んだのは、それらのグループ企業を束ねる統括企業だ。
環境関連商品を生産するために、昨年から12社の企業を買収して今年から本格的に操業する。環境関連商品は政府からの補助が有る。しかも販売先は政府関連の企業だ。半ば官制市場であり、景気のてこ入れでますますパイが大きくなりそうな業界だ。

彼らは今年中にホールディングカンパニーとして上場するつもりであり、生産能力の向上や、グループ企業の運営システム導入の指導を、私たちに打診して来た。

買収したばかりでまだ2、3人しかいない工場や、既に生産をしている工場ももあり、1年では到底上場できないだろうと感じる。しかし彼らは、金ならいくらでもある、と言う強いノリで望んでいる(笑)

この仕事はどう見ても2、3年がかりの仕事の様に見えた。
なぜなら、12社のグループ会社が集まっている理由が「金」でしかない様に思えたからだ。実現したい夢を共有している集団とは言いがたい。
各社の経営者の思惑をかいくぐり、外部の私たちが彼らの方向性を一つにする事は至難の業だ。経営トップの強いリーダーシップが必要だ。

環境負荷を減らす製品を生産する訳だから、実現したい夢は、「青い空」や「子供達が安心して成長できる未来」であるはずだ。経営の目的をここにおきグループ会社が同じ「夢」を共有すれば、顧客の顧客である消費者と夢を共有出来、それが社会に対する企業の存在意義となる。

各企業トップの話を聞いても、そのような気概は感じられなかった。
唯一の希望は、統括会社の董事長(まだ30代の若者)だ。彼は「電気自動車を生産している米国テスラと我々の企業集団の違いは何だろうか?」と質問してきた。私はテスラは新しい車社会を作ると言う「夢」を共有した集団であり、その夢を消費者と共有し企業の存在意義を持っている、と説明した。

そしてこの企業集団が共有するべき夢を、宣伝フィルムの様なストーリィにし、即席で語ってみた。少し心が動いたようだ(笑)


このコラムは、2016年1月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第459号に掲載した記事に加筆しました。

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