サムスンギャラクシーNote7発煙問題


 先週はサムスン・ギャラクシーNote7の発煙問題により、出荷済み品を交換しているとご紹介した。交換が中々行われなかった様で、自社の別機種に交換した場合100$、他社製品に交換する場合は25$の奨励金を出して回収速度を高めようとしていた。更に生産・販売を停止する所まで追い込まれた。

中国では既に航空機内でギャラクシーNote7の電源を入れる事を禁止していたが米国、日本も航空機内への持ち込みを禁止している。

先週のコラムには、同じメーカの電池に交換しても発煙が発生したと書いた。しかし別のニュース記事によると別メーカの電池に交換して発煙したそうだ。

電池メーカを変更しても発煙事故が発生したとなると、ボーイング787の発煙事故と同様に、充電側に問題があった可能性が高くなる。
電池はユーザから見れば、短時間で充電が完了し、長時間使用出来る方が良い。しかし、短時間で充電しようとすれば電池セルには負荷がかかり、温度が上昇するはずだ。
一方でスマホの高機能小型化により、消費電力は増し、バッテリィのサイズは小さくなる。
この二重の二律背反を解決するのが設計課題となる。
この技術をICの中で実現していれば、簡単には部品交換が出来ない。再度充電パラメータを設計し直し、ICに入れるのに数ヶ月の期間がかかるだろう。

上記記事には、数百人で原因調査を行ったが原因を特定出来ていない、とある。数百人も投入して何をしているのか不明だが(多分関連事業部の従業員全員の人数なのだろう。調査中の技術者をサポートしていると考えれば、清掃係も人数のうちになるのだろう・笑)
数人の技術者チームと、工場を調査する品質技術者チーム、それらのサポート要員が数名いれば十分だろう。多くても数十人だ。

こういう調査は、直接関わった設計者は向いていない事がある。彼らは設計の確からしさを検証する傾向があり、問題ないという結論を出す。しかし現実に問題は発生している。どうやったら問題が発生するかと言う、思考チェンジをしなければ原因の推定は出来ない。「充電回路のこの部品が間違っていたら事故は発生しうる」の様に逆の方向から検証する方が早道だと考えている。

ギャラクシーやアンドロイドスマホがこの世から消えても、私には何ら問題はないが(笑)今回の事故原因が究明・公表され失敗事例として社会に共有される事を願う。


このコラムは、2016年10月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第498号に掲載した記事に加筆しました。

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