QCC活動の指導


 前職時代にQCC活動に初めて触れてから既に37年になる。
独立後QCC活動を指導するようになって、バネのメーカからバスのメーカまで、大小いろいろな企業にQCC活動で生産改善や品質改善を指導して来た。

基本的にQCC活動の指導に必要なのは「管理技術」だ。
新旧QC七つ道具などに代表されるQC手法や、問題発見、課題設定、原因分析、対策検討……というQCストーリィ(活動の進め方)は管理技術に分類される。

しかしこれだけでは、各サークルが抱える問題を解決することはできない。
固有技術が必要となる。つまりQCC活動で成果が出るように指導するためには、管理技術+固有技術が必要となる。

私のような凡人でも、色々な業種でQCC活動の指導で成果を出すことが出来る。実はちょっとしたコツがある(笑)

管理技術については、基本的な使い方ばかりではなく応用に関しても実践的に身についていなければならない。しかし固有技術については、広く浅い知識と特定の分野に絞った狭くて深い知識があれば、なんとかなる。

何故ならば、指導している相手は解決課題の分野においては専門家だ。彼らの経験や知識を引き出すように、思考の道筋を立てて「ヒント」を与えれば良いだけだ。

例えば、光学部品メーカでレンズの『牛頓不良』の改善に取り組んでいる。
まず『牛頓不良』でたじろぐが(笑)『牛頓』がニュートンの当て字である事に気がつけば、『牛頓本数大』はニュートンリングが多い。すなわちレンズの削り過ぎだとわかる。

不良現象(ニュートンリングが規定より多い)が発生する原理(削りすぎ)を説明し、
それがどうして発生するのか?
どの工程で発生するのか?
と疑問を出す。指導している相手は専門家だ。次々と削りすぎが発生する要因を列挙することができる。その要因を一つ一つ検証して、真の原因を見つけるように指導すれば良いわけだ。

別の例では、DLCコーティングの工場から参加したQCサークルが、設備故障による損失を削減する活動に取り組んだ。
生産中に設備が故障すると、そのロットは全部一度塗膜を化学的に剥がして、再度塗膜を蒸着することになる。従って損失金額は通常の生産コスト以上だ。

私にはDLCコーティングに関する固有技術はない。サークルメンバーも蒸着設備に関しては、素人だ。この故障設備の現物確認により電源内にあるアルミ電解コンデンサの寿命故障と判明した。このサークルに指導したのは「アレニウスの法則」だけだ(笑)

設備を冷却することにより、設備故障は激減した。
十数台ある設備を合わせると、年間効果金額は350万元ほどになった。

問題や現象を物理的法則に従って定義する。問題が発生する条件(要因)を上げる。要因が真の原因かどうか検証する。こう言う手順を踏めば、業界・業種に固有な技術も、共通の物理法則や化学法則で考える事ができる様になる。


このコラムは、2018年8月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第708号に掲載した記事に加筆しました。

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