もう10年近く前の話になる。従業員9,000人ほどの大工場の指導をしていた。人手による生産から脱却し、自動化生産をしたいという経営者の要求を受けた。自動化設備の設計製造をしている友人からの要請でプロジェクトに参加した。現状のラインをどのように自動化するかアイディアを出すのが私の役割だった。友人はアイディアを設備として実現する才能を持っている。
当時すごい勢いで上昇し始めた労務費の削減が狙いだが、経営者と話をすると従業員マネジメントの苦労から逃れたいようだった。
現場を見ると、なるほどと思える。
従業員の躾が全くできていない。製品の持ち出しを懸念して作業現場の出入りには保安係の身体検査がつく。従業員を信じていないから、現場も経営幹部を信頼しない。
現場の改善は日本人幹部がやる。
作業改善のために治具を製作し現場に投入するが、班長が治具の使用を拒否。信じられない状況だ。日本人幹部がトップダウンで生産改善をしても、それを現場が運用しなければ効果は発生しない。
この様な状況下で、全自動化したいという経営者の要求が生まれたのだろう。
ここまで極端な事例はあまりないと思う。
しかし現場の中国人幹部に改善の積極性が低い、という日本人経営者の不満はよく聞く。自ら改善提案ができない、改善活動に消極的な中国人幹部が多い。そのため日本人赴任者主導で改善を進める。そして中国人幹部の能力も積極性も養われない、という悪循環になっている様に思う。
生産現場の監督職までも積極的に改善活動に参加する「改善文化」を作る。そのためには、現場の管理職、監督職の能力と意欲を磨く必要がある。
全自動生産設備を導入すれば生産性は上がるだろう。しかし改善は一度だけだ。改善文化を磨けば改善は継続する。
このコラムは、2018年3月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第647号に掲載した記事に加筆しました。
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