中国華南の産業構造変化


 いささか大仰なタイトルとなってしまったが,お許しいただきたい.
私は経済評論家でもないし,マーケットウォッチャーでもない.マクロに市場をみて中国華南の産業構造変化を語る資格も,データも持ち合わせていない.自分の身の回りをミクロに見て,中国華南で産業構造変化が起こっていると感じている.

従来電気電子製品のお客様が多かったが、新規のお客様の業種は自動車産業が多くなっている.長期契約をいただいているお客様は,全部自動車関連部品メーカである.
直近に工場無料診断で訪問したお客様2社は2社とも,自動車産業向けに製品をシフトしているところだ.

中国華南の産業構造は,PCなどの電気電子製品が牽引して来たが,現在は自動車産業にシフトし始めているようだ.

自動車産業は非常に裾野が広い産業だ.
完成車メーカを頂点にして,多くの部品メーカが完成車メーカの生産を支えている.業種も電子部品,金属加工,プラスチック部品,ガラス部品,配線部品などなど多岐に渡る.

多くのメーカは電気電子製品向けの部品生産から,自動車部品の生産にシフトしようとしている.そのようなメーカを訪問して感じるのは,まずは品質要求の違いに戸惑っておられると言うことだ.

例えば電子部品業界では,納入品の不良率は20ppm以下であれば,とりあえず合格点がいただける.しかし自動車部品の世界では,納入不良率を語ること自体がナンセンスとなる.

人の命がかかる部品だから,不良はゼロが当たり前と言う考え方だ.
そうはいっても,ウチの部品は,走行系にも,ブレーキ系にも関係ないからと言う声も聞こえるが,フロアマットが原因で市場回収が発生する業界だ.回収はフロアマットの品質問題が原因ではないだろうが,どんな部品であろうと不良ゼロが当たり前と言うことになる.

そのような業界では,不良発生の予防保全が重要となる.
従って,自動車関連メーカの採用監査や新製品立ち上げの工場監査は厳格なモノとなる.この様な工場監査での指摘は,監査官の意図を正確に理解しないと,自分の首を絞めることになりかねない.

受注欲しさに,何でも対応しますと口先で約束して,不良を出してしまう.指摘事項の意図を理解せずに,検査工程などをどんどん追加して,利益が出なくなる.

いずれも発注側・受注側にとって不幸な結果だ.

厳しい納期要求に応えるために,完成品倉庫を拡大する.中間在庫を大量に抱える.見かけの効率を追求し設備を専用化し,稼働率を下げてしまう.
この様な目に見えないロスや潜在的品質不良を抱えている工場もよく見る.こういう状況に陥ると,受注はあるが利益が出ない,キャッシュフローが回らないと言う,経営的に深刻な状況になる.

こういう状況が,我々コンサルの出番だと思っている.


このコラムは、2012年10月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第297号に掲載した記事です。

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