続・改善のコツ


 先週のコラムで「改善のコツは,解決すべき真の課題を見極めること」と申し上げた.例えば不具合が発生した場合などは,解決すべき課題が間違っていると,更に大変なことになる.

レストランで,料理に異物が混入しているのをお客様が見つけたとする.この時の優先解決課題は,異物混入防止ではない.まず優先して解決する課題は,目の前で怒っているお客様の不満足を解消することだ.

これは製造業でも同じだ.
顧客工程で不良品が見つかった時に,お客様は同一ロットの部品を使って生産を継続してよいかどうか,まず悩むはずだ.それに対して適切な解決策をまず提供することが必要だ.顧客のラインが止まっているのに,再発防止対策の話などしても顧客不満足は解消できない.

不具合発生に対し,不具合が発生しないようにするのが解決課題ではあるが,それが第一優先の解決課題でないことは,顧客視点で考えれば明白だ.

まずは「応急処置」をする.その上で,不具合が発生しないように改善する.
その改善の着眼点は,

  1. 原因を除去する.
  2. 原因があっても影響が出ないようにする.
  3. 影響を軽減する.

例えば,購入したプリント基板のダンボールを開梱する時にプリント基板のパターンに傷をつけてしまい,部品実装後に機能不良が見つかる不具合があったとする.

パターンに傷をつけてしまう原因は,カッターナイフで段ボール箱を開梱するからだ.

  1. 原因を除去する.
    納入用の梱包を,コンテナ通い箱にする.
    開梱にカッターナイフを使用しなくて良くなる.
  2. 原因があっても影響が出ないようにする.
    段ボール箱の上下に,段ボール紙を敷く.
    ダンボールに傷がつくだけでプリント基板には影響なし.
  3. 影響を軽減する.
    最上段のプリント基板は,部品面を上にする(片面基板の場合)
    傷がついてもパターンは断線しない(ただし外観不良になる可能性はある)

これは過去に遭遇した工程内不良の事例だ.
当時私が取った対策は,カッターナイフで開梱するのを止める,だった.プラスチック片の先端を切り落とし,尖った形状にしてカッターナイフの代わりとした.これならば梱包用の透明テープは切ることが出来るが,銅箔には傷がつかない.


このコラムは、2011年8月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第217号に掲載した記事です。

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