⁽¹⁾桓公：斉の君主。
⁽²⁾公子纠：桓公の庶兄（妾の子で兄）。
⁽³⁾召忽：公子糾の臣下。公子纠が殺されたため殉死した。
⁽⁴⁾管仲：桓公の臣下。
⁽⁵⁾九合：多くの人を寄せ集めること。

素読文：
子し路ろ曰いわく：“桓かん公こう、公こう子し糾きゅうを殺す。召しょう忽こつは之これに死し、管かん仲ちゅうは死せず。”　曰わく：“未いまだ仁ならざるかと。”
子曰わく、“桓かん公こう、諸しょ侯こうを九きゅう合ごうし、兵へい車しゃを以もってせざるは、管仲の力なり。其その仁じんに如しかんや、其仁に如かんや。”

解釈：
子路曰く：“桓公が公子糾を殺した時、召忽は公子糾に殉じて自害したのに、管仲は生きながらえている。こういう者は仁者とは言えないのではないでしょうか。”
孔子曰く：“桓公が武力を用いず諸侯を糾合したのは管仲の力である。管仲ほどの仁者は滅多にない。

桓公が腹違いの兄・公子糾を殺した時に公子糾の臣下・召忽は自害しています。同じく公子糾の臣下であった管仲は殉死しないばかりか、主殺しの桓公に使えた。子路はこれを「仁」の心から外れる、と言っています。
しかし孔子は桓公が武力によらず諸侯連合を築き上げ夷狄から中国を守ったのは管仲の力があったからだと言っています。
「仁」とは主従の間だけではなく、もっと広く国民のためにあるものだという教えでしょう。