人材の活用


 人,モノ,設備,方法がばらつくと品質がばらつく.
人のバラツキは,直接作業のバラツキとなる.モノ,設備,方法のバラツキをコントロール出来るのは人だ.従って直接・間接的に人が全てのバラツキの源と言ってよいだろう.

人は一人ずつ個性があり,ばらついている.
一人の人も体調や感情により,ばらつく.

これらのバラツキをコントロールする事で,品質のバラツキをコントロールできる.

人のバラツキをコントロールする方法として,人を仕事に対して固定化する,という手法が昔から日本の企業で行われていた.
仕事に関する暗黙智は,個人に蓄積され効率よく仕事を遂行することができる.この仕事に関しては,○○さんに聞け,という余人を持ってして替え難いマイスターが各職場に何人もいたモノだ.

こういう仕組みがうまく機能していたのは,長期雇用が前提としてあったからだ.
団塊世代の引退,契約社員・派遣社員など雇用形態の変化で,現場から多くのマイスターと暗黙智が失われる事となった.

バブル崩壊後,多くの経営者が飛びついた米国式経営は「仕事に人を付ける」形となっている.従って各職位の職務分掌や,マニュアルが充実している.
一方日本式経営は,上述の様に「人に仕事を付ける」形となっている.この大元のところを変えないで,表面的に米国式経営をまねたため,多くの日本企業が現場力を失ってしまった.

「人に仕事を付ける」方式が万能であると言っている訳ではない.
この方式は長期雇用が前提でなければ,暗黙智は蓄積されない.世代交代時の難しさも内在している.
日本の長期雇用は既に崩壊している.中国の労働市場では,初めから長期雇用は望めない.この前提に立てば,「人に仕事を付ける」方式はもはやうまくはゆかないだろう.

では,米国式に職務分掌・マニュアルを充実させればうまく行くだろうか?
短期的には,人材の入れ替わりに強い組織となるだろう.マクドナルドなどの業務マニュアルは,アルバイト職員がいつ入れ替わっても良い様に作られている.

しかしこの方法だけでは,日々蓄積される暗黙智を取り込んで行くことができない.日々成長する組織にはなり難い.

個人に蓄積された暗黙智を組織の形式智に変換する方法.
業務と業務の間の落ちてしまう様な仕事をお互いにフォローし合う方法.これらをインストールした,新しい人材活用方式に変えて行かなければならない.

新しい人材活用方式構築のキーワードは「意欲」だと考えている.


このコラムは、2012年8月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第272号に掲載した記事です。

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