私が住んでいる辺りは,東莞政府庁舎があり,オフィス街,商業地区だが,一歩路地を入ると,昔からの零細製靴工場が密集している地域がある.
しばしば通りかかるこれらの零細工場の門口には,工員募集の赤紙が貼り出されている.その貼紙を見ると細分化された工員の募集になっている.
開料,車面,介面,折面,界皮など靴製造の一工程と思われる単位で工員の募集をしている.
全部で2,30人の工員がいればこの辺りでは,大手工場という規模だ.零細工場が工程を細分化して,職人を募集する.非常に非効率なことに思えて仕方がない.
私は靴製造業界には詳しくないが,想像するに,日本の小さな靴工場は親方を中心に弟子何人かと靴を造っている.弟子は初めは下働きかもしれないが,そのうち靴造りの全工程を任され,一人前の靴職人になる.
しかしここいらの靴工場では,「車面」(たぶん靴製造工程中のミシン作業)という職人が存在し,その職位を極めることになる.従ってどんなに小規模であっても靴を造るためには数人の職人を雇う必要がある.
こういう工場を経営するには,運転資金を確保するため「量」を追求せねばならない.「質」より「量」,「品質」より「低価格」を追求するモノ造りは,未来はない.
弟子を育てるには時間がかかる.しかし弟子と二人でモノ造りをしていれば,「量」ではなく「質」,「低価格」ではなく「高付加価値」を追求できる.生産量の増加には,弟子を増やしてゆけばよい.一度に何人もの作業員を雇う必要はない.
既に中国でも単機能の職員や作業員をたくさん集めて,モノ造りをする時代は終わった.多能工を育て,少人数でフレキシブルなモノ造りを目指すべきだ.
このコラムは、2010年9月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第171号に掲載した記事です。
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