最近環境保護のためRoHS指令などにより有害物質が製品に含まれていないことを保証しなければならなくなっています。この方面では日本の中でトップランナー的な役割を担っておられるS社さんの「グリーンパートナー認定」を生産委託工場2社(台湾企業の中国工場)で同時期に指導したことがあります。
このころまだ台湾企業は環境問題にあまり関心がなく、ISO14000を取得している会社はまれでした。
そんな中で環境保護の話から説明し、何とかグリーンパートナーの認証が得られるように指導をしました。
さすがS社さんのネームバリューで、グリーンパートナーの認証を取得すること自体は2社とも大いに乗り気で、専属のプロジェクトチームを起こしてくれました。
まず環境管理システムを構築するために、1日指導をして方向付けを行い、1週間後に成果を確認する、という方法で準備を開始しました。同時進行で2社に交互に出向き指導をしました。最終的には2社とも無事グリーンパートナーの認証が得られましたが、それぞれの対応がまるっきり違っており非常に興味深いものがありました。
A社:
専属プロジェクトのリーダに品証部の経理がつきました。この人の人脈ですでにグリーンパートナーの認証を受けている会社があり、そこからいろいろ情報を入手したようです。よその会社でうまくいっていても、会社ごとの事情が違っているので、システムをそのまま持ち込んでもうまくは行きません。
準備の間中、彼は終始どうしたらS社さんの認証が得られるかということのみにフォーカスしていました。何度も環境管理の意義を説明して、原点に戻らせる必要がありました。ここをきちんと指導をしておかないと、認証合格しても現場がそれを維持することができません。意義をきちんと理解してもらうということが重要です。
B社:
こちらの会社は専属プロジェクトのリーダに管理部の経理がつきました。彼はユーモアのセンスがあって、メンバーを盛り立てるのが得意な男です。しかし環境管理に関する人脈はないようで、よその会社から環境管理システムを貰ってこようなどということはしませんでした。その代わり、会社の前の道路掃除からはじめました。従業員全員の意識は当然こちらの会社のほうが高くなります。
こちらの会社では有害物質の分析のためにICP発光分光分析装置という高価な装置を買ってしまいました。社長はこの装置が認証合格の決め手になったと思っているようですが、私から見るとプロジェクトのリーダのリーダシップによるところが大きいと思っています。
両社ともいろいろな手順を作りましたが、笑うに笑えないエピソードをひとつ。
まだ全ての部材が環境対応にはなっていないので、環境対応部品の識別のためのシールを作りました。これを業者さんが納入する梱包箱に貼ってもらおうと言う訳です。そうすれば受け入れ検査の検査員が一目で識別できます。
ある日受け入れ検査部の経理が困った顔で私に相談に来ました。日本の部品業者さんが、識別シールを貼らずに納入してきたので、これから受け入れ不合格として日本に部品を全部返却するというのです。私はそれを聞いて、一瞬めまいがしました。そんなことをしたら部品が欠品して生産ができません。
自分たちが作ったルールがちゃんと機能するかどうかも検証しないで、そのルールにがんじがらめに縛られてしまっています。