ロットごとにサンプルを抜き取り、ロットの品質を保証するという考え方があります。品質保証レベル(AQL)に従ってサンプル数を決め、検査をするわけです。しかしどう頑張ってもAQL=0.1%を保証するのがせいぜいでしょう。抜き取りサンプル数がとんでもなく多くなってしまいます。これだけ検査しても納品したロットの中から0.1%不良が有っても許してね、と言うのがAQL(Acceptable Quality Level)の意味です。やはり基本は工程内で品質を作りこむ、不良は作らないと言うことになります。
しかし検査をしてしまうと製品として使えなくなる様な場合は(破壊検査)、意味があります。その場合でもAQLレベルを上げてやらなくては経済的に成り立ちません。例えば1000個のロットでAQL0.1%を保証しようとすると、125個のサンプルが必要です(1回抜き取り並)。これでは検査費用を除いても10%以上のロスになります。
例えばトランスなどの様に不良モードが安全性に深刻な影響を与えるような場合は、AQLで保証してもらっても困ってしまいます。耐圧試験の不良などが発生してしまうと、たとえ1台であっても、ラインを止めて、原因を追究しなければなりません。従って受け入れ側でAQLで抜き取り検査をしても、あまり意味がありません。トランスの耐圧不良などのようなシリアスな欠点に対しては100%良品でなくては困るのです。
この辺を考えてか、私が指導したほとんどの中国工場は、受け入れ検査時の抜き取り基準を、シリアスな欠点に対してはAQL=0.0%にするという手順にしてあったりします。しかしこれは抜き取り検査の意味がありません。当然ですが抜き取りサンプル数の表の中にはAQL=0.0%などと言う欄は出てきません。AQL=0.0%では抜き取り検査ではなく、全数検査になってしまいます。
従って製品に深刻な不良モードを与える可能性のある部品に付いては、抜き取り検査で品質を保証するのではなく、きちんと部品業者の工程を見て、工程が品質を作りこめるようになっているかどうか確認する必要があります。