無駄を許容する


 青森県沖で訓練中の航空自衛隊機が墜落した。メルマガ執筆時、パイロットは依然行方不明であり、事故原因も不明だ。「レーダーから機影が消えた」という報道があるが、ステルス機がレーダーで捕捉できるのだろうか?墜落の原因は何か?など知りたいことは多くあるが、軍用機なのでその性能や弱点などを含む情報が公開されることはないだろう。

今日は事故原因からではなく、別の角度でこの事故を考えて見たいと思う。

航空自衛隊は、次期防衛戦闘機としてF35を導入することを決めているようだ。すでに150機ほど納入済み(あるいは納入決定)らしい。保守・修理を考えれば、すべて同型機で揃えるのが常識だろう。

整備・修理用の保守部品、機材、修理・メンテナンス中の予備機などの準備は同一機で運用する方が経済効果が高いはずだ。更に整備・修理工やパイロットも単一機とした方が育成コストが安く済む。

しかしもう少し踏み込んで考えると、揃えた戦闘機に致命的な欠陥が発見されると、代替えで運用できる戦闘機は無くなる。過去のF15が再登板する事になれば、戦闘時に性能的に劣勢になるかもしれない。軍備は相手と拮抗している事により「抑止力」となる。明らかに劣勢であれば、捨て身で本当に戦うことになる。

これは工場も同じだろう。同型の設備に統一しておけば、保守・修理などの運用コストは抑えられるが、その設備に固有な致命的問題が発生すれば生産が止まってしまうリスクがある。

組織も同様だと思う。
アリは働き者だという認識が一般的だが、実は一定割合でサボるアリがいる、という研究結果がある。その不埒なアリを集団から排除してしまうと、別のアリが働かなくなり、怠け者のアリの比率は一定となるそうだ。

全てのアリが休む事なく働き続ければ、多くのアリが疲れ切り集団の存続が危うくなる。「種の保存」原理が働いているのではなかろうか?
人間も、効率ばかり優先する集団より、無駄を許容する集団の方が、生産性や創造性が高くなるのではなかろうか?


このコラムは、2019年4月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第810号に掲載した記事に加筆・修正したものです。

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