不良品の流出


 中国の生産委託工場で,どう見ても工程内で不良として除去されねばならない物が出荷されてしまう事があった.

プラスチック筐体に入った電源装置が客先から不良返却されてきた.
中をあけてみると,部品固定用の接着剤がめちゃくちゃに塗布されていた.不良は別に原因があったのだが,何人もの作業員が接着剤の塗布が異常であるのを見ているはずなのにそのまま出荷してしまった.

接着剤を塗布した作業者,その下流のケースをつけるまでの工程の作業者が接着剤の塗布に異常があることを見ていながら全員何事もなくその製品を流してしまったわけだ.「異常品」を見つけても自分の作業として指示がされていなければ何もしない.

どうも彼らには,他人の仕事に口を出してはいけないという間違った「美徳」がある様である.

問題を発生させた工程と,その後で気が付くべき工程の作業者全員に連帯責任で罰金をかけるという手もあると思う.しかし過去の出来事で叱られても実感がわかない.このような不良が見つかるのは,氷山の一角でしかないので単に「運が悪かった」と思うだけ.ということであまり効果がないだろう.

また現場で叱ろうと思っても,このような現場に出会うのはよほどの幸運がなければ見つからない.

即効性は期待でないが,毎日毎日言い続けて作業者や班長たちの意識を換えてゆくしかてはないと思っている.
私は「Check-Do-Check」,前工程から受け取ったものをチェックして自分の作業をする,自分の作業結果をチェックして次工程に流す,ということをしつこく指導した.
また前日の不良品を集めて製造,品証,生産技術を中心とした幹部と毎朝不具合検討会をやっていたが,この場で教材になると思える不具合品があると,製造の班長を呼び現物を見せてしつこく教えた.

「異常とはいつもと違うこと」の具体例を現物で見せるわけだ.そして異常があれば必ず報告するように作業員に指導させる.

最終製品がエンドユーザにどのように使われているのかを,理解させる.それと平行して自分たちの使命(例えば良い品質の製品をお客様に届けて他の会社より高くても買っていただく)を良く理解させて,仕事に対する誇りを持たせる.

自分たちの仕事や製品に対する誇りがあれば,指示されたこと以上の仕事ができると考えている.


このコラムは、2008年5月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第34号に掲載した記事に加筆しました。

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