原田さんは掃除のおばさんまできちんと情報が共有できていると豪語していましたが,それがハッタリではないという迫力があります.
たとえば工場訪問の帰りにシンセンの駅まで送ってくれた運転手さんは,携帯にかかってきた電話で話をしていたのですが,翌日の別の運転手の行動予定まできちんと把握していました.
指導をしている中国工場で,私が班長さんに教えたことがちゃんと共有できていない.彼らにしてみれば,せっかく林さんが「自分」に教えてくれたのに,他の人にも教えたら自分の相対価値が下がってしまう,と言う論理が働くのでしょうか(笑)
社員間で仕事を抱え込んでいて,担当者が休んでしまったり突然退社すると困ってしまうという局面が間々ありました.
原田さんからは,情報をきちんと共有できないのは,上層部がきちんと共有する姿勢を示さないからだと指摘されました.
中国ではリベートが当たり前です.購買など外部の業者とやり取りしている部署は気をつけないといけません.リベートの分だけ高い買い物をさせられる可能性があります.
別の指導先でこんなことがありました.
休日に緊急で出荷をしなければならなくなり,営業担当が業者に電話をしてコンテナを手配しました.折り返し電話がかかってきて,リベートを振り込むから口座番号を教えてくれと言ってきたそうです.
原田さんの工場では業者から貰ったものは共有物として登録され,社員に配分する仕組みを作ってあるそうです.
部品も価格(月別の推移もわかるようになっている),ベンダーなどの情報が張り出してあります.こうすることによって、ベンダーとの癒着などが不可能になります.
前回「教育」のコラムでも紹介しましたが,原田さんの工場では,経営数字まで全従業員に情報共有されています.日本の会社では当たり前かもしれませんが,台湾系,香港系の会社では経営数字は経営者と経理担当の管理職しか知らない,なんてことが間々あります.
このようにトップダウンで「情報共有」の姿勢を見せれば,現場の班長さんや職員達も情報の共有ができるようになるでしょう.
この「情報の共有」が,共に学び共に成長する,チームワークで仕事をする,ことの基礎になります.
このような企業文化が,競争力の源泉になるのです.
「文化」はそう簡単に真似ができません.良い企業文化をコアコンピタンスにすれば,他の企業はそう簡単に追いつけないはずです.