ホンダが品質保証体制を強化


ホンダが品質保証体制を強化、相次ぐリコールを受けて担当役員を配置

 ホンダは2014年10月23日、全社の品質保証体制を強化すると発表した。2013年9月に発売した「フィット」(図1)と同年12月に発売した「ヴェゼル」(図2)のそれぞれのハイブリッド車(HEV)が、リコールを繰り返していることを受けたものである。

 同社の四輪事業本部に「品質改革担当役員」を置き、同役員が本田技術研究所の副社長を兼務する体制にする。担当役員には専務執行役員(現・四輪事業本部第一事業統括)の福尾幸一氏が、2014年11月1日付で就任する。さらに、技術研究所の開発体制を見直し、生産・品質・カスタマーサービスなどの各部門が連携してチェックする体制を整える。こうした新体制によって、品質問題の撲滅を目指すという。

 「フィットハイブリッド」は発売直後の2013年10月と12月、2014年2月と7月の合計4回にわたってリコールを繰り返した。フィットハイブリッドと同じパワートレーンを搭載する「ヴェゼルハイブリッド」についても、2014年2月と7月に2回のリコールを行った。ホンダによるといずれも、「モーターとエンジンを組み合わせて制御するシステムの開発過程において、様々な使い方を想定した検証が不十分だったため」と説明している。

(日経テクノロジーオンラインより)

 この記事を読んで、ホンダに品質保証担当役員がいなかった事に、驚いた。当然品質保証組織は有っただろうが、そのトップが部長・本部長など中間管理職と言うのはいかがなモノだろうか。品質保証が機能する・しないの問題ではない。経営者が品質保証を重視していると言う姿勢を示すために、役員クラスの経営幹部が品質保証部のトップにいるべきだと考えている。

ホンダのような大企業が、そのための人財がいなかったとは考え難い。
営業担当役員、製造担当役員、技術担当役員などはいたはずだ。品質保証担当役員がいなければ、この会社は品質保証を重視していないと、社内外の人は考えるだろう。

人財が豊富にいない中小企業でも、品質保証重視を社内外にアピールする方法は有るはずだ。

ある企業経営者は、技術部、製造部が品証部に協力しないと言う問題に直面した時に、品証部長の給与を他の部長より高くしたそうだ。たったこれだけの事で、各部長が品証部長に協力する様になり、部門間の協調が上手く行く様になったそうだ。これも経営者が「品質保証重視」を社内にアピールする方法の一つと言えるだろう。

 ところで、ホンダのHPのリコール告知は、そこそこ詳しく現象・原因が記述されており、ある程度参考になった。

過去のフィット、ヴェゼルのHEV車リコールを調べ、私なりに二つに整理してみた。

  1. 組み込みソフトウェアのバグが原因となるリコールが大半を占めている。
  2. モジュール化し再利用をするためリコール対象が一気に増える。

最近はあらかたの製品が、マイクロコンピュータによって機能を実現している。
ソフトウェアをバグなしで設計する事は、事実上不可能だ。従って、デバック、設計検証、妥当性検証と言う手段でバグを発見修正することになる。
どこまで使用者の立場で検証出来るかが、検証の優劣になる。属人的なセンスに依存しがちな検証を、漏れなくダブりなく検証項目を挙げる仕組みを作る事が重要だ。

そして、検証に先立ち検証計画を立てる。計画を立てて検証作業に入らないと、ずるずると際限なく検証を続けることになる。この計画書を具体的かつ詳細に作れば、検証作業を外注化する事が可能になる。
しばしば、外注に仕様書を投げ、完成品を社内の若手設計者が検証する、と言うやり方を見る。しかし、検証を外注化し、若手設計者に設計・実装の仕事を与えた方が、設計者の育成効果が高いと思う。

ところでこの様な、検証システムを作ったとしても、設計者はバグゼロを目指して設計しなければならない。
人命の安全が最優先であり、協力工場に対し、不良ゼロは当たり前、と言っている以上、ソフトウェアと言えどバグゼロは当たり前でなければならない。

以前トヨタが、リコールを連発した時に「コストダウン目的のモジュール化」が過度に行われた結果だと言う批判的な記事を多く見た。

モジュール化とは、部品を組み合わせて作った機能ユニット(モジュール)をどの製品にも再利用すると言う意味だ。

しかしモジュール化の本当の狙いは、設計を標準化し、品質を安定させる事だ。その結果設計コスト、品質損失が下がると言う事であり、コストダウンが目的ではないはずだ。

問題は設計のモジュール化ではない。

第一の問題は、モジュールのインターフェイス仕様の定義に曖昧さが有る事。
インターフェイス仕様と言うのは、モジュールを組み込む際の製品との取り合いと表現すれば分かり易いだろうか。
最も単純なインターフェイスは、モジュールを製品に組み込む時のネジ位置だ。
例えば、動力ユニットで言えば、出力トルクや馬力の性能だけでなく、車体に取り付ける方法、タイヤの径、車体の重量等々、どの範囲で再利用出来るかを明確に定義したのがインターフェイス仕様だ。

第二の問題は、モジュールを応用した場合の検証が不十分な事。
当然モジュール自体は設計検証が完了した状態になっているが、組み合わせの検証を省略して良いと言う訳ではない。


このコラムは、2014年10月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第395号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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