ホウレンソウというのは「報告・連絡・相談」のことだ.日本の企業では当たり前のことだが中国ではなかなか難しい.
日系企業でも「報・連・相」という標語が張り出している工場を見たことがある.しかし「ホウレンソウ」のように分かりやすいインパクトはない.
中国の会社で「ホウレンソウ」がうまく行かずに困っている幹部の方も多いのではないだろうか.
部下がきちんと「ホウレンソウ」ができないと嘆く前に,自分が部下に対して「ホウレンソウ」ができるようにしているかどうか見直したほうが良い.
部下がきちんと報告できないのは,能力が足りていない場合がある.上司の部下育成の努力不足である.連絡・相談も普段からコミュニケーションがうまく行っていなければ,期待するほうが無理だろう.
こんな極端な例はあまりないかもしれないが,私がセミナーに使っていたホテルの例を紹介しよう.
このホテルは4つ星ホテルで,その地域では老舗のホテルである.
定例でこのホテルでセミナーを開催していたが,セミナー開催の一週間前に担当の女性から電話がかかってきた.「セミナー会場は,月餅の倉庫になっているので使用できない」との報告だ.
中国では中秋節にどのホテルも月餅の販売に力を入れており,その月餅がセミナーを開催予定の会議室にいっぱい積み上げられているというわけだ.
いきなりそんな連絡を貰っても困る.
大体中秋節は毎年の恒例行事であり,事前に分かっていたはずだ.
月餅販売の担当者と会議室担当者の間で連絡がきちんとできていない証拠である.
結局私のセミナーはホテル内のレストランの個室で開催された.
その次の回は会議室の予約が入っておらず,私がホテルに到着した時点で何も準備がしてなかった.
担当の女性はセミナー開催の直前に別の部署に異動になっていた.
3回目は心配だったのでセミナー開催の4日前に,営業部の経理(日本で言えば部長)に電話で確認をした.
しかし又予約がスタッフに伝わっておらず準備がしてなかった.問題の経理は春節前で長期休暇をとっていた.上司からしてこれである.
たまたま2回とも他に予約が入っていなかったので事なきを得た.
この事例で中国は全部こうだと言うつもりはないが,中国人スタッフは個人プレーに走る傾向にある.
上述の例では営業部に会議室の予約状況が全員に分かるようにカレンダーを張り出しておけば簡単に防げたであろう.
「ホウレンソウ」がきちんと回る職場の雰囲気を作り,「ホウレンソウ」が行われるような工夫をちょっとするだけで格段に良くなると考えるのだが.
ちなみにこのホテルでは以降セミナーを開催しないことにした.
仏の顔も三度までである.