【華南マンスリーコラム】ハンカチで文化の違いを知る!


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 中国人と日本人.見かけはほとんど同じ.話をして見なければ中国人か日本人か区別が付かないことがある.実は私には中国人と日本人を見分ける方法がひとつある.トイレで手を洗ったあと,ハンカチを出して手を拭いていれば日本人.そのままならば中国人.
私たち日本人は小学校に上がったときから毎朝母親に「ハンカチは持ったか?」と聞かれ,学校では先生に持ち物検査をされハンカチを持っていないと廊下に立たされた.こういうことを2,3年も続けてようやくハンカチをいつも携帯するという習慣ができるわけだ.
習熟→習慣→習性にまでステップアップすると,ハンカチを持たずに外出すると気分が悪くなる.こういう習慣が文化を支えることになる.
中国の工場でも同じだ.従業員に対して母親のように辛抱強く毎日指導をすればやがて習慣となり,強い企業文化の基になる.
中国で仕事をしているとよく中国人の習性,習慣に戸惑うことがある.
例えば現場で問題が発生する.関係者を集めて再発防止,改善を検討.参加者は口々に自分は悪くない,だれそれの問題だ,と責任の所在をめぐって責任のなすりあいになる.
初めのころはいらいらして「そうじゃない,昨日起きてしまったことはもういい.明日どう問題を解決するかを話したいんだ」と大きな声を出していた.これを何度も繰り返しているとこちらも学習し,会議が始まって30分くらいは黙って聞いていることにする.言い訳合戦が一段落したところで「ではこの問題が又発生しないようにするにはどうしたらいい?」と初めて口を開く.
こういうことを続けていると,問題を隠すよりは問題を解決したほうが高い評価が得られるということを理解してもらえる.
こうして「問題を共有する」という文化が芽生え始める.
「ホウレンソウ」は日系の工場ならば常識である.「報告・連絡・相談」をまとめて「ホウレンソウ」といっている.「ホウレンソウ」もなかなか習慣にならない.
例えば毎日生産高を報告しなさい,と指示をする.報告される数字は毎日1000とか1100などとキリのいい数字が並んでいる.毎日発生する不良の数は違うはずであり,毎日の完成数がキリのいい数字になるはずはない.
調べてみると投入数を報告している.これを報告がちゃんとできないと嘆いてはいけない.管理者の指導が足りないのである.
生産管理板の完成数の数字を報告するのだと,具体的に教えなくてはいけない.まずきちんと理解させてそれを繰り返すことによりきちんと報告するという習慣が出来上がる.

このコラムは中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2008年4月号から1年間連載した「炎の小道具12選」に寄稿したものです.