【華南マンスリーコラム】ものさしで品質管理,人質管理


#3 現場に出るときはいつも作業服の胸ポケットにものさしをさしている.これでサボっている作業者の頭をペシッとやる,訳ではない.
現場・現物・現実の3ゲン主義を徹底するためには,率先垂範が大切である.
現場で部品がケースに収まらない,ケースの不良だと騒いでいる.こういう時にものさしがさっと登場する.ケースの寸法を測り図面とつき合わせる.
ケースの問題だと騒いでいるのが,部品の組み立て方が悪いのが分かったりする.何事も現物で確認するということをやって見せる.
 口で言っているだけではなかなか習慣にならない.現場のリーダが常にものさしと図面を持ち歩くようになるまで,徹底的に率先垂範で教え込む.
ものさし=基準の見える化
 ものさしの効能はこれだけではない.ものさしというのは「基準」である.常に基準を明確にしておくという効果を徹底したい.
モノのばらつき,作業のばらつきが不良を発生させる.これらのばらつきを基準内に管理する事が,品質管理である.
作業の基準.検査の基準.これらがきちんと明確になっていなければ,モノ造りはできない.
更に人のばらつきを管理することも重要である.人のばらつきは品質ばかりでなく生産性にも大きく影響を与える.
 人の基準は人それぞれ違っている.「一生懸命」仕事をする.という「一生懸命」は人によってレベルが違う.これをひとつのものさしによって統一する.
 すなわちこの作業は○○秒以内に完了する.作業の出来上がり品質はこのレベル.と明確に基準を設定する.
これが達成できるように,作業者の教育・訓練をする.場合によっては工程改善・治具化・機械化を行う.これで人のばらつきを抑える.
「人質管理」から「人心管理」へ
人のばらつきを抑えれば,品質,生産性ともに安定するはずである.しかし作業の基準を明確にすることの本当の効果は別にある.
 作業に対する要求基準を満たすために,作業者が努力をする.その努力が評価される.という仕組みがきちんと機能すれば,規準は作業者の目標になり,目標達成のモチベーションを与える事が出来る.
「会社に対する忠誠心」は求心力にはならない.「自己成長意欲」を求心力としたオペレーションが重要である.
これが「人心管理」の第一歩である.

このコラムは中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2008年4月号から1年間連載した「炎の小道具12選」に寄稿したものです.