市場情報と信頼性設計


 金属疲労と溶接不足が原因 名古屋・エスカレーター事故
 名古屋市営地下鉄の久屋大通駅で乗客14人がけがをしたエスカレーター事故は、エスカレーターの制御装置の台座を固定するボルトの金属疲労と固定の仕方の不備が重なって引き起こされていたことがわかった。事故原因はこれで、ほぼ特定された。
                           (asahi.comより)
 2008年5月9日朝のラッシュ時に地下鉄駅で発生したエレベータ事故である.
実はこのエレベータは2007年9月の定期点検時に2本の固定ボルトが折れているのが見つかっている.金属疲労による破断であった.
しかしエレベータメーカはボルトが折れていた場所など計4カ所を,台座の下の基礎部分に溶接した鉄製金具で台座を押さえつける補修をしただけである.
金属疲労でボルトが破断しているということは,
・設計条件が実際の環境と違っていた.
・設計が設計条件を満たしていなかった.
ということが想定されてしかるべきである.この時点で応急修理だけではなく,きちんと設計にさかのぼって検討をする必要があったのではないだろうか.
2007年9月の補修以降2008年4月にも定期点検があったが,この際には固定ボルトの点検・交換は行われていない.
少なくとも想定外の疲労破壊が発生しているのであるから,固定ボルトは新品と交換し,7ヶ月使用した固定ボルトを持ち帰り詳細に検査すべきだ.
報道によると,点検業務は委託会社がやっていた.現場への指示や現場からのフィードバックが不十分だったのではなかろうか.
耐久資材を作っているメーカにとって現場の修理サービスの情報は自社製品の信頼性設計に非常に重要であるはずだ.これを委託会社に任せてしまい,現場の情報が上がってこなくなっていないだろうか.
記事では,これで事故原因が特定できた,と報道しているが,固定ボルトが疲労破壊した原因まではさかのぼっていない.
何事も源流までさかのぼって解析する必要がある.
またもっとも重要な現場の情報が設計部門にきちんとフィードバックする仕組みを持たなければならない.