5S再考:整頓


 5Sは元々日本で考え出された工場管理の方法であるが,いまや中国でも日系企業ばかりではなく,中華系工場も5Sの標語を掲示してある.
中には「安全(Safety)」「スピード」「節約」「習慣化」「サービス」「シンプル」などを追加している工場もあり,6Sは当たり前,8Sというのまで見た事がある.
しかし何か違和感を感じている.日系の工場も含めて「見せ掛けの5S」になっているように思える.
本来5Sとは生産性改善,品質改善の基本であって,モノ造りだけではなく全ての会社に適用可能である.5Sの目的は「儲かること」でなければならないと考えている.
「明日お客様がいらっしゃるから5Sを徹底するように」と発破をかけること自体が5Sの本当の意味を理解していないことだといえる.
第二のS:「整頓」の定義は,
「必要なモノを定位置に定量おき,表示を明確にする」
中国では「三定:定位・定量・定品」と説明している.
すなわち定位置に定量だけ決まったモノをおいておく,という意味である.
このとき「モノ」という単語は中国語で「物品」と言わないで「東西」と説明するようにしている.これは前回「5S再考:整理」で説明したように,「整頓」しなければならないモノは品物とは限らないからである.
作業がしやすいように作業場の材料を置く場所を決めておく.これで材料を取る時間が0.1秒短縮できたとする.0.1秒を馬鹿にしてはいけない.1時間に1000個作る工程ならば,これだけで3%生産性が改善できる.更にこの0.1秒の積み上げが作業者の疲労を軽減すればもっと大きな効果が期待できる.
工具をきちんとラックに吊るしてしまってある.工具の形を表示してどの位置に戻せばいいかすぐ分かるようにしてある.ラックの定位置も床にテープで表示してある.
「整頓」がきちんとできているように見える.しかし本当にそうだろうか?
作業者は工具を使うたびに定位置においてあるラックまで取りに行っている.
取りに行く時間,戻しに行く時間が無駄である.これが「見せ掛けの整頓」だ.
ラックは作業をする場所に移動しておかなければならない.
製品・半製品は,未検査品と検査済み品の見かけはまったく同じ場合が多い.
未検査品,検査済み品の置き場所を決め表示をしておく.これが「整頓」である.「整頓」によりモノの状態が明確になる.これで工程飛ばしを防ぐ事が出来る.
作業に対して「整頓」すると言うのは,作業の内容,順序を決めきちんと見えるようにしておくことだ.一種の標準作業化である.これにより生産性が安定する,異常状態がすぐわかるようになる.
子供の頃母親からしょっちゅう「机の上を整頓しなさい」といわれた.5Sの「整頓」はそれよりも少し深い意味がある.
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5S再考:清掃