5S再考:清潔


 5Sというのはもともと日本から入ってきた考え方である.それをいきなり中学しか出ていない中国の工員さんたちに理解させようというのが無理な話だ.
農村部でわれわれ日本人が想像もできないような生活をしていた子達に「5Sをしっかり守るようにしなさい」と指導したところで理解できるはずが無い.
分かりやすく説明することが必要だ.
四つ目のS:「清潔」の定義は,
「整理,整頓,清掃の3Sを徹底し,維持できるようにすること」
国語辞典を調べると
清潔:
 (1)汚れのないこと.きれいなこと.
 (2)人格や生活態度が正しくきれいであること.
とある.
5Sの清潔は若干異なる.
整理を徹底し,維持できるようにすること
 要らないモノが発生したらすぐ捨てられるようにしておくこと.要らないモノが発生しないようにしておくことである.
要らないモノをおいておく場所をなくしてしまう.こうすれば整理するしか方法が無い.
今使わないモノ.これも要らないモノである.これを作らない.必要なときに必要な分だけ作る.
JIT(ジャストインタイム)生産方式はまさに「清潔」の方法である.
JIT生産方式は完成車メーカだからできることだ.われわれ部品メーカは作りだめをしておかなければ対応できない.とおっしゃる経営者がよくおられる.
JIT生産方式の本当の狙いを理解していない.必要なときに必要な分しか作らない.実際やってみる.これでうまくできないところを改善する.
JITとは改善しなければならない所を浮き彫りにし,改善のプレッシャーをかける.改善を継続するための仕掛けなのだ.
整頓を徹底し,維持できるようにすること
 たとえば設備のメンテナンス・段取り換え時に工具を使う.この工具を決められた位置においておけば探す無駄が省ける.これが整頓である.整頓が徹底,維持できるようにするためには,戻すことも考えなければならない.
従ってメンテナンス・段取り換えに必要な工具を設備のそばに置くようにする.
これで整頓された状態が維持しやすくなる.
さらに一歩進んで,工具を使わなくてもメンテナンス・段取り換えできるようにする.
ねじを締める場所があれば,ドライバーを使わなくてもねじを回せるようにする.またはねじを使わなくても脱着できるようにする.これが清潔である.
清掃を徹底し,維持できるようにすること
 工場の壁の塗りなおし作業をさせたときに驚いたことがある.床には塗料がたれ,壁だけではなく腰板まで塗料がはみ出ている.塗り終わった後に拭き掃除をすれば良い,という考え方だ.
あらかじめ床に養生シートをおき,腰板にはマスキングをしておく.こうしておけば拭き掃除をしなくてよい.しかも塗りあがりもきれいになる.こういう考え方が「清潔」だ.
テーピングされた部品をリードフォーミングしリードの長さを切りそろえる.
この作業によって切り取ったテープとカットしたリード屑が床の上に散乱する.
作業の後に清掃をしなければならない.
あらかじめゴミ箱を用意し,テープがゴミ箱に落ちるようにする.リード屑は飛散しないようにする.これが「清潔」だ
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5S再考:躾け