【華南マンスリーコラム】ストップウォッチで生産改善


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ストップウォッチで生産改善
 現場に出るときはいつも作業服の胸ポケットにストップウォッチを入れている.
 はじめて中国の工場に指導に来た頃,工場の生産技術のエンジニアがストップウォッチを持っていないのを見て驚いた.どうやって作業時間を設定し,評価をするのか?元来彼らには標準作業時間という概念がなかったのである.
 標準時間とは何か,というところから指導が始まった.指導の長い道程を憂いながら,彼らと一緒に仕事をした.しかしその次の回にはエンジニアは得意げにポケットからストップウォッチを出して見せてくれた.更に次の回には作業指導書に標準作業時間が入れてあった.
 少しずつでも現場のエンジニアたちが成長するのを見ているのは楽しい物である.
ストップウォッチで作業を見える化
ストップウォッチがなくても作業時間は計測できる.一日なり一時間に出来上がった製品の数から一台あたりにかかった時間は計算できる.しかしこれは平均値である.平均値からは作業の問題点は見えてこない.
現場でストップウォッチを片手に作業を見つめる事が重要である.同じ作業を繰り返したときに必ず作業時間のばらつきが発生する.平均値よりはこのばらつきの幅に着目する.なぜそのばらつきが発生するのか現場でじっと見ることにより作業を阻害している要因が見えてくる.ここが改善のポイントである.
同じように作業者間で作業時間のばらつきがあれば,ここをじっと見る.早く作業ができる作業者の動作を分析し,それを他の作業者もできるようにする.
ストップウォッチで作業を楽しく
お手伝いしている工場で「F1 プロジェクト」というのが始まった.この工場は設備産業であり設備の稼働率を上げる事が生産性を改善することになる.まずはロットの切り替え時間を1/3にへらすことにした.従来1時間半かかっていたので目標は30分である.
簡単に1/2になった.しかしその後がなかなかうまく行かない.そこでF1プロジェクトの登場となった.ロットの切り替えをあたかもF1のピットのように全員が一致協力して作業をする.
毎回作業の結果が見えるから仕事が楽しくなる.作業員の心に火がついた.今は目標が15分になっている.

このコラムは中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2008年4月号から1年間連載した「炎の小道具12選」に寄稿したものです.