【華南マンスリーコラム】手帳で部下育成


記憶より記録#5
 現場に出るときはいつも作業服の胸ポケットに手帳を入れている.手帳が汗で濡れてしまわないようにビニール製のカバー付だ.
 この手帳に何でも,記録している.加齢により記憶力が減退したからではない.もとより私の大脳はモノを覚えるためには使っていない.記憶よりは創造に大脳を使っている.
 現場で即指導をモットーにしているので,記録しておく必要はないが,メモを基に後日理論付けをして再指導をするのに役立つ.
 現場指導(OJT)の「Why」を理論で教えることにより更に教育効果が上がる.
OJTは計画的に
 知識は簡単に教えられるが,能力はなかなか開発できない.教えた知識を能力に変換するのがOJTだ.
 OJTなどムダだ,と言っておられる経営者とお目にかかった事がある.彼は現場に新人を放り込んでおけば自動的に人は育つ,これがOJTだと考えていたようだ.
 これでは人は育つはずもない.これはOJTではなく放任主義,もっと厳しい言い方をすれば教育放棄主義だ.
 各自の能力を見極め,足りない部分を現場での仕事を通して鍛える.これがOJTだ.
 各自に要求される能力と現有能力の差分からOJT計画を立てる.そしてOJTのPDCA(計画・実施・評価・是正)のサイクルを回さなければならない.
行動記録で能力評価
 では能力はどう評価するか.知識であれば試験をすれば数値評価が可能である.例えば部下の指導能力とか企画能力というのはどう評価すれば良いか.
 成果主義的な考えでは,部下の成長,アウトプットされた企画の質で評価されることになる.しかしできの悪い部下しか持たない不幸な上司や,企画立案のサポートに回ったメンバーの評価が公平にできるだろうか.
 要求する能力を発揮してどのような行動が取れているか,というプロセス評価主義で評価するのが妥当であろう.
 ここで登場するのが胸ポケットの手帳である.現場での部下の行動記録によって,期待するレベルの行動が取れているかどうかを評価する.
 この評価によりOJT計画の是正を行うわけである.

このコラムは中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2008年4月号から1年間連載した「炎の小道具12選」に寄稿したものです.