不況の処方箋・高付加価値


 先週は世界同時金融不況の逆境の中で,高品質にこだわり収益性を上げようというテーマで書かせていただいた.

今週は逆境をチャンスに変えるため「高付加価値」の追求について考えたい.

高付加価値:
「高品質」も一種の付加価値になりうる.従って先週の記事とダブるところはある.
例えば不良が極端に少なければ(狭義の高品質)顧客は受け入れ検査を省略できるであろう.これは物そのものの品質ではなく物を使う際に発生する付加価値といって良いだろう.

顧客が部品を生産現場に投入する時の利便性を考えて梱包形態を変更するという事例も高付加価値の実現だ.

この事例のように物の付加価値を上げることは,開発設計が伴わなくても可能だ.

工場で製品の開発をするということはあまりないかもしれない.しかし工場が開発機能を持たなくて良いということではない.物を作りながら(今日のメシの種)新しいモノ造りの技術(明日のメシの種)を開発すべきだと考えている.

次世代主力になるであろう製品を作るための技術を先駆けて開発しておく.
これはOEM工場でも採れる戦術だろう.

CDドライブを搭載した廉価音響製品を作っていたあるOEM生産工場は,DVDを搭載した高級製品をばらして作り方を研究していた.今その工場は超高級音響製品を生産している.

OEM供給先の要求に先駆けて生産技術を蓄えておけば,こちらから商品企画の提案もできる.顧客・ベンダーの主従関係から,パートナー関係に転換できる.

生産量が落ちている時ほど「重要だが急がない案件」に取り組むチャンスである.

製品やサービスの付加価値を高めるためには,必ずしも製品の開発設計は必要ではない.自社ブランド製品がない工場でも応用は可能なはずだ.

製造業以外でも応用可能だ.
例えばレストランで店員が顧客の名前を覚えて名前で呼びかける.
たったこれだけで顧客のリピート率は上がるはずだ.
石龍にあったレストランは私を名前で呼んでくれた.
たったこれだけのことで,私は毎日通っていた(笑)

ハンバーガチェーンのように「こちらもいかがですか?」と芋フライを勧めても顧客ロイヤリティは上がらない.


このコラムは、2008年12月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第72号に掲載した記事です。

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