動画の力


 テキストデータを読んだり,聞いたりするよりは,写真を見た方が素早く理解出来る.写真を見るよりは,動画を見た方がより深く理解出来る.

これは情報量が,テキスト<画像<動画となっており,情報量が多い方がより理解が深まる,と言うのが一般的な理解だろう.

しかし私はちょっと違う解釈をしている.
人は物事を理解したり,記憶するのは,経験を通して達成される,と考えている.この仮説が正しければ,情報量ではなく実体験に近い方が,理解が深くなるはずだ.
たまたま情報量の多さと実体験との近さが同じ順番になっているだけだ.

私の仮説が合っているかどうかは別として,工場で指導する時に,ポンチ絵,写真,動画を使う事が多い.

ある工場では,熟練を要する作業があり,その工程がいつもボトルネックとなっていた.班長も組長も,その作業が熟練の過程でどう変わっているのか分からないので,新人作業者に説明が出来ない.

こう言う場合は,その作業をビデオで撮影し,熟練者と新人の違いを分析する.その違いを言葉で説明しながら,ビデオを見せるとその瞬間から新人でも,ベテランと同じ様に作業出来る様になった.

違いを分析する,それを言葉にする,と言う作業は多少能力が必要だが,動画の威力は高い.

今週の雑感でも紹介したが,Youtubeの動画もたびたび活用している.
バスを造っている工場に,トラックや乗用車の生産ラインの動画を見せた.ここの経営幹部に「バスはトラックや乗用車とは同じではない」というのが「口癖」の人がいる.こう言う発言は,思考停止に他ならない.他の業界でうまくいっている方法を,そのまま真似出来ないにしても,自分たちの工場に適用するにはどうしたらいいか?こう言う発想が革新を生み出す.

「理想解」から色々な制約条件の元に「現実解」を見出すことができれば,それが自分たち(制約条件下)の「理想解」にほかならないだろう.

現場改善も同様だ.現在の作業をビデオに撮る.そのビデオを見ながら,ムダを見つけ,改善のアイディアを出す.
私のような現場改善のコンサルは,現場を改善することが仕事だ.
しかし自分で改善を進めてしまうと,仕事が終わった時点で改善は停まり,むしろ退歩が始まる.現場のリーダたちに改善の方法を教え,行動を起こさせる所までやらなければならない.自分で改善してしまった方が楽でも,ビデオを見せながら一緒に考える.

ビデオカメラ一台で,リーダの改善能力が相当上がるはずだ.
ビデオカメラと三脚,高級品でなければ2~3000元もあれば買える.
効果に対して相当安い投資だと思えるが,あなたの工場ではビデオカメラを改善に使っているだろうか?


このコラムは、2013年7月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第316号に掲載した記事です。

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