ピンチをチャンスに変える
ピンチはチャンスだ.チャンスは時としてピンチの仮面をかぶってあなたの前にやってくる.
経済危機,顧客嗜好の多様化など工場の外で発生していることを,業績不振の理由にしてはならない.工場の外で発生していることは,いくら経営努力をしても改善することはできない.
ピンチをチャンスに変えるためには工場を変えなくてはならない.工場を変える力,変化に対応する力を産むのが研究開発だと考えている.
工場でも研究開発
研究開発というと,世の中にない素材を開発する基礎研究,新しい商品を創造する商品開発を思い浮かべるかもしれない.そのためには優秀な人材を多く集め,莫大な時間と資金の投資が必要だ.従って研究開発を資金力のある大企業の専売特許のように考えている方が多いのではないだろうか?
工場には,商品設計をする機能はない.中小企業は優秀な人材も資金力もない.しかし研究開発はできる.普通の人でも,お金と時間をかけずに,儲かる工場に変身する努力ができるはずだ.
世の中にない素材,商品,技術を開発することだけが研究開発ではない.自社にない素材,商品,技術を自社に取り込むことも研究開発といってよいはずだ.それによって同業他社にない力をつけ,競争優位に立つ.顧客との主従関係を脱却し,パートナー関係となることができる.
研究開発の力
では工場の研究開発とは具体的にはどんなことか,事例を紹介したい.
生産をより高付加価値商品にシフトする.ある工場はCDラジカセの廉価品をOEM生産していた.その当時から市販品のDVD機器を分解し,どのように生産したらよいか検討していた.今では高級ホームシアターシステムを生産している.顧客の商品戦略にいち早く追従できた結果だ.
生産をよりフレキシブルにする.あるネジメーカでは,独自に生産改革を行い,ネジを1本から受注生産し翌日には納品する体制を整えた.業界の常識を超えたリードタイムを実現することにより,価格競争に巻き込まれない優位性を確立できた.
生産効率を極限まで高める.ある電子部品工場では10年来の生産方式を革新し,生産効率1.5倍,スペース効率2倍を達成した.作業改善をし,簡単な半自働機を導入しただけだ.
製造業だけではない.サービス業でも研究開発は有効だ.ある飲食業はたった二つのことをしただけで売り上げが倍増した.笑顔とお客様を名前で呼ぶ,たったこれだけだ.
本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2010年3月号に寄稿したコラムです.