大型タイヤ脱落


大型トラック、バスからタイヤが脱落する事故に関して興味深い記事が出ていた。
「大型タイヤ脱落、4~6年目注意 部品交換直前、ハブ・ボルト劣化 事故、7年間で7倍」

(朝日新聞)

記事を要約すると、2002年に発生したトレーラーのタイヤが外れ、母娘三人が死傷する事故が発生以来、国土交通省は8トン以上のトラックや定員30人以上のバスで起きたタイヤの脱落事故を集計している。
その統計によると、2004年度87件から2011年度11件まで減少したが、近年増加傾向にあるという。2018年度は前年比14件増の81件発生している。

この事故の発生時期を分析すると、11~2月が54件(全体の67%)、タイヤを取り付けてから3カ月以内に起きた事故が70件(全体の86%)、積雪の多い地域での発生46件(全体の57%)、であることが判明。

以上の分析から、夏タイヤから冬タイヤに交換した際にタイヤホイールを固定するナットの締め付けに問題があると推定。
国土交通省は以下の対策を呼びかけた。

  • タイヤを交換する際に適切な力でナットを締める。
  • タイヤを交換して50~100kmを走った後にナットを締め直す。
  • 運行前にハンマーを使って点検。
  • タイヤを交換する冬場に特に注意する。

しかし対策を実施しても事故は増加傾向にあった。

さらに事故発生車両について過去4年間に事故を起こした車両を調査した結果車両の登録後の使用期間で以下のことがわかった。

  • 登録後4~6年目の車両の事故が95件(全体の約4割)
  • 登録後7年以降の車両は事故が大幅に減少。

単純にタイヤ交換時のナットの締め付けの問題とは言えなくなった。
車両メーカによるとタイヤのハブやボルトは7~8年で交換することが多い。

以上の結果、タイヤ交換が頻繁にある雪国で使用する車両で且つハブやボルトが交換してない車両を重点的に点検すれば良いことがわかった。

事故車の破断したボルトの破断面を調査しても、疲労破断とナットの締め付け不良による破断の区別がつかなかったのだろう。
この事例では、原因不明の事故の統計データを発生時期(季節・使用期間)に着目して見直したことで原因が特定できた。

同様なことは製造業でもある。
不良率の変動を月ごとに見直すことで乾燥(静電気)が原因とわかった。
不良が発生する時間を調べるたら近隣を列車が通過する時刻と一致した。

原因がなかなか特定できない事故や不良を調査する時に「統計データの切り口を変えてみる」というのは、業界が違っても役に立ちそうだ。


このコラムは、2019年12月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第910号に掲載した記事です。

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