機能検証と妥当性検証


 先週の「失敗から学ぶ:「Galaxy Fold」発売延期」に読者様からコメントを
いただいた。

※I様のコメント

何時も楽しく拝読させて頂いています。
激動の中国で数十年、頑張っていらっしゃる姿に、感動すら覚えます。

さて、今回のメール内容で珍しく「アレ」と思ったのでメールさせて頂きました。

完成を待たずに販売に走る典型と言へば、Windowsが上がると考えます。
当時、某ゲイツらはDOSからの更なるシェアー拡大など狙い、キャラティカルデザインからUNIX系が試していたグラフィカルデザインを模したWindows3.0(もっと前のバージョンもありますが割愛)を無償配布し、市場の反応を見て、間も無くWindows95を販売致しました。
これは、今でも続いている通り、不具合発生毎にバージョンアップの形で、時には有料にて修正しています。
ソフトウェアとハード的に縛りがあるスマートフォンやタブレットを、同じ土俵で考えるのは浅はかかもしれませんが、モノづくりはとりあえずやってみようの精神が大事です。
サムスンのやり方は、顧客を無視していますが、市場で使ってもらい、データーを蓄積させて行く形と考えれば、間違いではありません。
何時もの先生(勝手にそう呼んでいます)の意見なら、そこを突いて来るかなと思ったので、初めてメール致しました。

日本に戻って既に7年経ちますので、感覚に変化があるかも知れませんが、モノづくりの現場は忘れていないつもりです。

これからも有益な情報、よろしくお願いいたします。”

 ご指摘の通り、ハードウェアとソフトウェアは同列に考えるのはむつかしいと思う。

市販ソフトウェアの場合は開発費以外の変動費コストはかなり低くなる。したがってα版、β版と称して市場にばらまき、反応を見る(バグ取りをする)のはアリだと思う。

しかしハードウェアの場合は1台ごとにコストがかかっているのでサンプルバージョンを無料配布して市場の反応を見ることはできないだろう。
以前頻発したリチウムイオン電池の発煙・発火事故などが発生すれば、無料配布なのだから、というのは免責にはならない。

巨大化・複雑化するソフトウェアの信頼性検証は相当困難だろう。どれだけ検証評価をしても「バグはもう一つある」というのが業界の常識の様だ。そんな訳で銀行システムや、航空券発券システムがダウンしても「バグならしょうがないか」という諦めが社会的に許容されているように見える。

しかし今回の事例のようにハード購入後わずか数ヶ月で壊れてしまうというのは、購入者にとって許容できるレベルではないと思う。当然生産者にとっても無償保証期間内の故障なので莫大な品質損失が発生する。

先週の記事は、「そんなことにならないように事前検証をしっかりしましょう」というつもりで書いた。

ソフトウェアのバグも社会的に大きな損失を与える可能性大だが、どうすれば良いか、実は私にもわからない(苦笑)
「10連休後にアクセスが集中したら」の様に過去事例から検証パターンを作ることくらいしか思いつかない。
そういう意味ではI様がご指摘の通り「市場で使ってもらい、データーを蓄積させて行く」ことになる。(業務システムでは不可能だろうが)

しかしハードウェアの機能検証、妥当性検証は、もっと簡単に出来そうだ。

例えばスマホの寿命を5年(機能の進化が激しいのでもっと短い?)とし、1日の開閉回数を10回とすれば、10×365×5=18,250回程度の開閉試験を実施すれば確認できるはずだ。

保護シートを剥がしてしまったために故障したという事例もあった様だが、妥当性検証評価に「ユーザが間違って保護シートを剥がしたら」という仮定を評価項目に加えることはそんなに難しくはないだろう。


このコラムは、2019年5月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第824号に掲載した記事に加筆したものです。

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