旅客機滑走路逸脱事故


 4月23日に山形空港で名古屋行きフジドリームエアラインズ(FDA)386便が離陸時に滑走路を逸脱した事故があった。

運輸安全委員会の事故調査は、2020年9月時点で調査中のままだ。

「滑走路逸脱のFDA機、車輪操作装置に不具合 山形空港」

 山形空港で4月、フジドリームエアラインズ(FDA)の旅客機が離陸走行中に滑走路を逸脱した重大インシデントで、国の運輸安全委員会は28日、旅客機の車輪を操作するステアリング装置の一部に不具合が見つかったと明らかにした。

 FDAの聞き取りでも、機長は「機体が左にそれたので戻そうとしたが、(車輪を操作する)フットペダルを踏んでも戻らなかった」などと話していた。原因を特定するため、運輸安全委は飛行データや機体を詳細に調べるという。

 インシデントがあったのは4月23日夕。名古屋行きのエンブラエル175型機(乗客・乗員計64人)が離陸走行中、全長2千メートルの滑走路の途中で左にそれて草地で止まった。けが人はいなかった。運輸安全委によると、直後の初期調査でステアリングの不具合が見つかったという。

朝日新聞 DIGITALより)

事故機はエンブラエル社製ERJ175。エンブラエル社(ブラジル)はあまり耳にしないが、エアバス、ボーイングに次ぐ世界第3位の航空機メーカだ。カナダのボンバルディアより売り上げ規模が大きいらしい。

実はERJ175より一回り小さいERJ145を、広西省出張時にしばしば利用した。左1列、右2列という変則的な座席レイアウト。搭乗ドアがタラップになっており、ボーディングブリッジには接続できず沖スポからの搭乗。ひょいと離陸する軽やかさなど印象のある機体だ。

事故機は2016年6月製造、2019年1月に「重整備」が行われている。おそらく何も問題はなかったのだろう。

記事にある「旅客機の車輪を操作するステアリング装置」とは航行中方向舵を操作するフットペダルだ。地上でタキシングする際には前輪の向きを変える役割を持つ。

ここまでの情報で大胆にも「素人考え」で事故原因を推測してみた(笑)

事故機は駐機位置から誘導をを通って滑走路までタクシング出来た。従って離陸開始までは前輪操舵機能には問題がなかったはずだ。離陸後はフットペダルは方向舵の制御に使う。離陸後のタイミングで、手動または自動で前輪/方向舵の制御が切り替わるはずだ。

離陸開始後から離陸前にこの切り替わりが発生すれば、前輪の方向を制御しようとフットペダルを操作しても、虚しく方向舵の角度が変化するだけとなる。

従って今回の事故は、前輪/方向舵の切り替えに何らかの人為ミスまたは故障があったと推定してみた。

多分新聞記事になった時点(5月28日)で、事故調査官はすでに答えを知っているだろう。本当の事故原因はわからないし、今後公表されないかも知れない。それでも、原因を考えてみるのは「頭の体操」だけではない。以下の様な効果がある。
今回の事例では「モード切り替え」「タイミング」をキーワードと考えることが出来る。

  • モード切り替えができない。
  • 予期せぬタイミングでモード切り替えが発生する。

という潜在要因の引き出しが増えるはずだ。
これは自社の製品設計、工程設計の時の潜在不具合要因となる。
同様に問題原因解析時に挙げることができる問題要因が豊富になる。


このコラムは、2019年6月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第832号に掲載した記事に追記しました。

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