6月1日夜に発生した横浜市シーサイドライン自動運転列車逆走事故を先週配信のメールマガジン835号「列車逆走事故」で取り上げた。
6月6日早朝に横浜市地下鉄ブルーラインで脱線事故が発生した。
新聞記事に事故原因が公表されている
「点検作業、手順書なし ブルーライン脱線事故」
横浜市営地下鉄ブルーラインの脱線事故で、横浜市交通局は近く事故調査委員会を局内に立ち上げる。保守作業員が「横取り装置」と呼ばれる器具を点検した後、線路上に置き忘れた初歩的ミスが原因とみられるが、現場ではこの器具の点検に関する手順書がなく、作業時の役割分担があいまいなことも判明。組織や職員の意識の問題点を洗い出し、再発防止につなげる。
(以下略)
全文朝日新聞ディジタルより
記事によると、夜間保線作業に使った「横取り装置」を本線上に置き忘れた。そのため、始発列車が横取り装置に乗り上げ脱線した。という経緯の様だ。
横取り装置とは、工事用車両が側線から本線に乗り入れるための分岐装置だ。レール脇に設置されており、使用時には固定ピンを外し本線側に接続する。固定ピンを外すと回転灯とブザーが警報を発生する仕組みになっている。
本来横取り装置が本線につながっている間は、固定ピンを外したままにする様設計されていたのであろう。しかしこの作業時には固定ピンを戻し警報を止め、作業終了後も横取り装置の撤去を忘れてしまった。
固定ピンは、横取り装置の外し忘れ防止の「ポカ避け」として設計したのだと思われる。しかしその設計意図が現場に伝わっていなかった。もしくは警報音がうるさいので故意に固定ピンを戻した。といういわゆる「人為ミス」だ。
新聞記事には保守管理所は3ヶ所あり、事故を起こした保守管理所だけが作業手順書を作っていなかった、と書いてある。しかし「作業手順書」がないのが原因ではなく「標準作業」を決めてないのが原因と考えるべきだろう。
通常生産現場では、設備治具の設計者が標準作業を決めているだろう。従ってポカ避けの設計思想がきちんと現場に反映される。さらに標準作業が遵守され、それを確認する作業を織り込んで作業手順書を作成する。作業手順書は実際に作業をする側で作成するのが通常だろう。
今回の事例では横取り装置の標準作業は装置の設計部門で作成。その手順書は保守作業部門で作成する。とするのが合理的の様に思う。標準作業には固定ピンの役割(ポカよけ)が明示してあり、固定ピン脱着のタイミングが明確に規定してある。
手順書には、標準作業に従った作業の手順と確認方法が規定してある。
生産現場でも、生産技術が開発した設備・治具に関する標準作業は生産技術が作成。その作業手順書は製造部門が作成。標準作業と作業手順書に矛盾がない事を品質保証部門が確認。
煩雑な役割分担の様に見えるが、設計思想をきちんと現場に伝え、現場は自分たちがやりやすい作業手順を決めることができる。
このコラムは、2019年6月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第838号に掲載した記事です。
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